「女は娘で母で叔母で姪で姉や妹で祖母でそれぞれに忙しい、あ、妻もあった?」ボルベール 帰郷 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
女は娘で母で叔母で姪で姉や妹で祖母でそれぞれに忙しい、あ、妻もあった?
いろんな箇所に表れる赤=アルモドバルカラーは応援と励ましの色だった。女優がまとう普段着衣装がそれぞれの個性と用途に合って心が和んだり死を悼んだり仕事モードになったり。とにかく女の手はいつも働いて動いている。ペネロペの衣装、その中でも映画クルーのために料理する場面のエプロンはドンピシャリだった。明るい色と模様で細身、形はシンプル、紐がすごく細いやつ。日本では紐が細いのを殆ど見つけられない。もさっと幅広の紐でレースとかヒラヒラとか不用なものが多く柄もダサい。もともとエプロンあんまり使わないけど。
笑えるシーンが沢山あった。キッチン床の夥しい血を大量のキッチンペーパーに吸わせるところ。それからモップで拭き取るところ。冷凍庫うまく使った!キッチン知り尽くしているから大丈夫!顔についてた血を指摘されて「女はいろいろあるのよ」
「ママのおならの匂いがする」。復活したママがキッチンで娘(ペネロペ)に「あんた、昔からそんなに胸大きかった?何か入れた?」死んだと思ってたのに、幽霊かと思ってたのに、本当のママとの再会後にそういう日常的会話がいきなりできるのが共感できて笑った。
風が強い田舎町だから風力発電のバカでかい風車が山ほどあってぐるぐる回っている。ドン・キホーテが立ち向かう風車の現代版?あの風力発電はかすかに波長だか何かを出していて近隣に住んでいる人は頭痛とか鬱になると宮古島のタクシーの運転手さんから聞いたことがある。
女同士が血縁があってもなくてもかたまっていて挨拶でほっぺたキスを沢山して、助け合ったりズケズケと物言う関係がとても羨ましい。男は威張らず陰に居てするべき仕事をこなしてさえいればすべてが潤滑にうまくいくのだ。娘に手を出す男ってなんなんだ?そばの木の幹に生年と没年を刻むのは優しさではなく、女達が総出でお墓の掃除をする習わしから死者への思いとして自然にしたことなんだと思う。
ライムンダ(ペネロペ)、パウラ(ライムンダの娘)、ソール(ライムンダの姉)、ママ(ライムンダ&ソールの母)、アウグスティーナ(ベリーショートの友人)、パウラ(ライムンダ&ソールの叔母、ライムンダ&ソール姉妹の母の姉)。これらの役を演じた6名の女優は皆、個性際だち適役だった。