劇場公開日 2007年6月30日

「【”様々な女性の赦し。”今作は、信じ難き酷い出来事に会いつつも、手段を問わず自分の人生を切り開いていく逞しき女性達に捧げられた賛歌である。男はどう足掻いても、女性には敵わないのである。】」ボルベール 帰郷 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”様々な女性の赦し。”今作は、信じ難き酷い出来事に会いつつも、手段を問わず自分の人生を切り開いていく逞しき女性達に捧げられた賛歌である。男はどう足掻いても、女性には敵わないのである。】

2022年12月29日
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鑑賞方法:VOD

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ー 今作は、様々な女性の赦しを描いている。
  そしてペドロ・アルモドバル監督の新作の「パラレル・マザーズ」と同じように、酷い出来事を経験しつつも、それを乗り越え、逞しく生きる女性達を見事に描いている。
  なによりも、前半はコミカル&ミステリアス要素を絡めながら、後半は女性の逞しさにフォーカスして行くペドロ・アルモドバル監督の脚本の凄さに驚いた作品である。

■15歳の娘パウラと失業した夫パコを養うため、忙しなく働くライムンダ(ペネロペ・クルス)。
 そんなある日、娘のパウラが自分を犯そうとした父を台所で刺し殺してしまったのだ。
 娘を守るため夫の死体の始末をしている最中に、パウラ叔母の急死の知らせが届く。

◆感想<Caution! 内容に触れています。>

・前半は、ライムンダの愚かしき夫の所業に、”刺し殺されて当たり前だ!”と思っていたら、怒涛の様なストーリー展開にやや、ボーゼンとする。
ー ライムンダが、夫の死体を友人のエミリオが経営している、一時閉店し、鍵を託されたレストランの冷凍庫に入れ、ヤレヤレと思っていたら、突然近くで映画を撮影していたスタッフから、“ランチ、30人前”を頼まれ、引き受ける姿に、”エエッ、そんな状況でエミリオに相談もせずに、ランチ、引き受けちゃうんですかい!”とビックリする。
  が、ライムンダは、知り合いの女性達からカナーリ、強引に食材を譲り受け、何故か生き生きと30人前のランチを作り、提供する。
  逞しいなあ・・。コメディかな・・。-

・中盤は、火事で死んだと思われたライムンダの両親の話に移行して行くが、母、イレーネがパウラ叔母の所にいるのでは・・、とミステリアスなトーンに変わって行く。
そして、ボケてしまったパウラ叔母の面倒を見ていた、アウグスティナが、火事と同じタイミングで忽然と姿を消した事が、明かになってくる。

・すると、イレーネが実は生きていて、パウラ叔母が亡くなった後に、ライムンダの姉、ソーレの家に匿われているシーンが、可なりコミカルに描かれる。
ー イレーネは美容室を営むソーレの家で”ロシア人”として暮らすことになる。序でに言うと、イレーネが使ったトイレの後に入ったライムンダが”おならの匂いがした!”と言う件はクスクス笑える。-

・だが、ここから何故、イレーネが生きていたのか。何故、イレーネはこっそりライムンダの顔を見て、涙していたのかが、明かになっていく過程はヒューマンドラマである。
 イレーネの夫は、アウグスティナの母親と関係を持っていただけでなく、ナント、ライムンダを犯していたのである。故に、娘のパウラはライムンダにとっては、妹でもあるのである。
ー 怒涛の人間関係である。そして、ここに又愚かしき男(劇中では描かれない)が居たのである。ライムンダの強気な性格が分かった気がする。だって、普通だったら心折れるでしょう・・。-

■イレーネが、ライムンダに涙ながらに自分の夫がしたことを、詫びるシーン。それを受け入れ赦すライムンダ。
 又、ライムンダが、夫を埋めた”夫が好きだった土地”に娘パウラを連れて行くシーンも、彼女の夫に対する赦しであろう。

<怒涛の如き、ストーリー展開の物語であるが、この作品から立ち上がって来る言葉は
 ”信じ難き、酷い出来事に会いつつも、手段を問わず自分の人生を切り開いていく女性達の逞しさを描いている。”と言う事に尽きると思った作品である。>

NOBU