劇場公開日 2007年6月2日

「心の淋しさの「穴埋め」が目的か」あるスキャンダルの覚え書き talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 心の淋しさの「穴埋め」が目的か

2025年11月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

他人のスキャンダルを利用して、自分の存在を確固としたものとする。
そして、その他人の行動を自分の掌中に収めようと企てる。
日記帳に、そのスキャンダルの詳細を書き留めながら。

そういう「独占欲」というのか、「自己顕示欲」というのか、その恐ろしさとは、おそらく、この作品が描写するとおりなのでしょう。
鑑賞中を通じて、「身の毛もよだつ」という言葉が、評論子の脳裏には、ずっと浮かんでいました。

「一見すると、親切で、善良そうな教師の顔の、その奥底に秘めた醜い欲求」-。

しかし、この作品の本当のモチーフは、老教師バーバラ・コヴェットの「淋しさ」というところに求められるのではないかと、評論子は思います。

心の淋しさ故に、その淋しさを共有して「穴埋め」をしてくれる人を探す―。
それが、彼女の本当の目的なのでしょう。

作品では、彼女が目を付けたのは、家庭でも夫婦愛に恵まれず、やはり心のどこかに「すき間」を持って生きていた若い女性教師のシーバ・ハート。

そして、彼女のスキャンダルを、いわば「人質」として、バーバラは、自分との友情をシーバに強要する―。

思いがそこに至ると、バーバラに対して「醜さ」を超えた「哀れさ」を感じるのは、評論子だけではないと思います。

その女優としての力量から、ジュディ・デンチが、バーバラの役どころを貫禄たっぷりに、見事に演じきった-否、怪演した―。
そういう評価ができる作品だと、評論子は思います。

なかなかの佳作だったとも、思います。

talkie