「観客に突きつける謎解きへの挑戦状、観客を驚かせ魅了することに取り憑かれた人間像」プレステージ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
観客に突きつける謎解きへの挑戦状、観客を驚かせ魅了することに取り憑かれた人間像
映像の時間系列が入り乱れ、種明かしはキチンとなされているが、見ている者にはすぐには分からず、観客に謎解きの挑戦状を突きつける、まさにノーラン監督らしい傑作。自分も1回目には良く分からず、2回目でようやく全体像がクリアになった。
原作が有るということだが、双子が瞬間移動マジック舞台だけでなく私生活でもしょっちゅう入れ替わってるというアイデアと映像化に拍手。ヒントは幾つかあったが、ラストまで全く推測出来なかった。愛する女性は彼らの中ではきっちり区分けされているが、彼女らにとっては、愛ある日と無い日があることからの悲劇となる展開も上手い。
そしてなんと言っても、離れた場所にコピーを作るテスラ氏によるマシーンには驚愕。加えて、冒頭の数多くの帽子の映像、転送に失敗と思わせておいてネコ2匹の声と姿でどんでん返し・コピー誕生を匂わす展開が上手い。そして、銃を傍らに置きマシーンに自らを置く偉大なるダントンことヒュー・ジャックマンの姿。ラストの方で、銃でコピーを撃ち殺す映像、ラストのショッキングな映像に繋げていく映像アイデアが素晴らしい。
そして、小鳥が消えてまたプレステージとして別の場所から現れる映像、この残酷な種が明かされ、これがダントンの瞬間移動芸のモチーフになっているのもお見事。
教授ことクリスチャン・ベールの片側による鳥カゴ破壊やネタバラシによるダントン舞台潰しの嫌らしさ、刑務所での看守への手錠かけの腹いせ、因果応報なのかあっさり無実なのに絞首刑になってしまう展開も、興味深い(英国で19世紀末とは言え証拠無しで死刑には、説得力あまり感じなかったが)。
教授の瞬間移動の謎を執念深く探り部屋荒らしの犯罪的行為まで手を染めるマジシャン・偉大なるダントン、観客の驚く顔見たさに発明家に財産を注ぎ込み、大きな犠牲を払って人気を獲得も、最後に教授の生き残った側により撃ち殺される顛末。狂おしいまでに観客の喝采を求める姿に、常に新しいことを行い観客を驚かせ魅了し続けるクルストファー・ノーラン監督、自分自身の自画像を重ねている様に感じた。