「電流戦争を初めて知りました。」プレステージ よしさんの映画レビュー(感想・評価)
電流戦争を初めて知りました。
19世紀末のロンドン。ライバルである二人のマジシャンの壮絶な出世争いを描いた物語。
CSのレビューでは「サスペンス」と書かれていますが、基本的には主人公グレート・ダントンとアルフレッド・ボーデンの確執を描いた人間ドラマです。
マジシャンとしてのライバル心に、グレート・ダントンの奥さんが事故死(ボーデンのミスによるマジック中に溺死)したことからの復讐心が加味され、ドロドロとした人間ドラマが展開されていきます。
終結への道程で、ボーデンがダントンを水槽に閉じ込め殺したとして裁判を受けるシーンが描かれる等、その確執の凄まじさを感じさせます。
このようなドロドロとした確執を描く人間ドラマは、個人的な好みではありませんが、それでもその迫力は素晴らしいものでした。
ただ、とても分かり難く、見難い映画です。
現代と過去を行き来する手法は元々苦手なのですが、この映画では二人のマジシャンを別々に描いて行くので、分かり難さが倍増した印象です。
また、ドラマ佳境で、「電流による物体コピー」という突拍子もない設定がつぎ込まれて、悪い意味での驚きを禁じ得ませんでした。
リアルな設定による人間ドラマとして鑑賞していた私としては、置いてけぼりになった気分でした。
クライマックスで、どんでん返しが二つ待ち受けていましたが、どちらも今一です。
一つ目。ボーデンの双子設定は、途中で想像がついてしまいました。
また、双子とはいえ「二人で一人」という極端な思考に何故陥ったのか?何故、妻にまでそのことを明かさなかったのか?その説明がなされていないことが気になります。
そこら辺の説明がなされれば人間ドラマとしてより奥行きが出たと思います。逆にそれがないと、「何でもあり」と感じてしまいます。
二つ目の「水槽で死んだのはコピーで、実はダントンは生きていてた」という設定については、しっかりと説明がなされていて、とても良い設定だったと思います。
「マジックの度に、自分のコピーが一人死んでいく」。こんな凄惨なマジックを仕掛けるほど暗く深いボーデンに対する怨念が、空恐ろしくなります。そして、愛する妻と同じ死に方を準備する、ダントンの妻への愛情についても、情の底深さを感じる見事な設定でした。
しかし、肝心の人体コピーを「突拍子もない」と全否定しているので、素直に評価する気持ちになり難くくも感じました。
絞首刑になるボーデン、娘を迎えに行くもう一人のボーデン。壮絶な迄の明と暗のラストは印象深いものでした。その他にも観るべきものは幾つも散りばめられていましたが、私的評価は少し厳しめにさせてもらいました。