劇場公開日 2007年9月8日

「あれは被告の弁護士?あ・・・お父さん。」HERO(2007) kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0あれは被告の弁護士?あ・・・お父さん。

2018年12月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 TVでは第一回の放送を見たきり、まったく見なかった。考えてみると、最近のミステリー小説、TVドラマでは割と多くなってきていますけど、昔は推理小説といえば私立探偵、刑事、弁護士が主人公であることが定番だったような気がします。高木彬光の霧島三郎、和久俊三の赤かぶ検事、夏樹静子の女検事霞夕子等々、法曹界の仕組みや捜査の緻密さなど、随分勉強になりました。この『HERO』においては、被害者や遺族への配慮も大きく、被告に対しても思いやりが感じられました。

 検察という職場があまりにも明るく和やかなムードであるのはリアルではないと思うのですが、今作品のゲストである元検事(松本幸四郎)の語る「事務的」というキーワードが検察の実態を言い当てているのでしょう。一人の検事が膨大な事件を処理する中で生まれてしまう冤罪事件・・・これにも困ったものですが、舞台となる東京地検城西支部の面々のように真剣に取り組んでくれるといいですよね。

 TVレギュラーとスペシャルを見ているとわかりやすいんだろうな~と思ってしまう、今作品。さすがに中井貴一のキャラが掴みにくい。基本的な事件は傷害致死事件と森田一義演ずる大物政治家の贈収賄事件。刑務所のベッドで余生を過ごす中井貴一の面会は、韓国の特別ゲスト、イ・ビョンホンよりも時間を割いていたくらいだ。こうした構成は、やはりTVスペシャルの域を出ない。単体で映画らしく仕上げるならば、被害者の婚約者の心理描写やタモリとの確執部分を映像で工夫するとか、色んなことが考えられるだろうに・・・

 映画のダイナミックさこそ味わえなかったけど、俳優の演技だけは安心して観ていられた。やはり松たか子は上手いし、中井貴一は存在感があるし、八嶋智人には笑わせてもらった。随所にカットインされる天秤を持つ女神像と効果音によってトリビアの泉を思い出してしまいました(最近見てない)。『ジャンゴ』を観た直後だったので、香川照之、田中要次、石橋蓮司が登場すると、余計なことまで想像してしまいました。

kossy