「ダンブルドア軍団ルールその1。ダンブルドア軍団のことを口にするな。」ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ダンブルドア軍団ルールその1。ダンブルドア軍団のことを口にするな。
“生き残った男の子“ハリー・ポッターとその仲間たちの冒険を描いた魔法ファンタジー映画『ハリー・ポッター』シリーズの第5作。
ヴォルデモート卿の復活を受け、ダンブルドアは精鋭集団「不死鳥の騎士団」を再結成する。
その一方で、闇の帝王の復活を信じたくない魔法省は、ホグワーツを統制するため上級次官ドローレス・アンブリッジを送り込む。「闇の魔術に対する防衛術」の教授であるにも拘らず、実技を一切指導しようとしないアンブリッジに業を煮やしたハリーは、学生を中心とした自衛組織「ダンブルドア軍団」を密かに結成。ヴォルデモートに備えるのだが…。
原作はJ・K・ローリング。
○キャスト
ハリー・ポッター…ダニエル・ラドクリフ。
ロン・ウィーズリー…ルパート・グリント。
ハーマイオニー・グレンジャー…エマ・ワトソン。
ヴォルデモート…レイフ・ファインズ。
シリウス・ブラック…ゲイリー・オールドマン。
セブルス・スネイプ…アラン・リックマン。
ミネルバ・マクゴナガル…マギー・スミス。
リーマス・ルーピン…デヴィッド・シューリス。
シビル・トレローニー…エマ・トンプソン。
セドリック・ディゴリー…ロバート・パティンソン。
アズカバンに収監中のデス・イーター、ベラトリックス・レストレンジを演じるのは『ファイト・クラブ』『チャーリーとチョコレート工場』の、名優ヘレナ・ボナム=カーター,CBE。
メインテーマはジョン・ウィリアムズ。
〈ダンブルドア軍団ルールその1、ダンブルドア軍団のことを口にするな。
ダンブルドア軍団ルールその2、ダンブルドア軍団のことを絶対に口にするな。〉
…と箝口令が敷かれている中、本作のレビューに挑みます。
『ハリー・ポッター』シリーズも後半戦に突入。
実は『ハリポ』は前作『炎のゴブレット』(2005)までしか鑑賞したことがなく、この『不死鳥』以降は全くの未見。原作は全巻、リアルタイムで一応読んではいるのですが、正直言って惰性で読み進めていたのでほとんど覚えていない。という訳で、かなり新鮮な気持ちでこの物語と相対する事が出来ました。
まずもって思ったこと。…これ『スター・ウォーズ』(1977-)?
今回初めて魔法使い同士のガチバトルが描かれた訳だが、良い者の光は緑、悪者の光は赤と、かなり分かりやすく視覚化されていた。…わかりやすいというか、『スター・ウォーズ』そのまんまですやん…。
吹き替えだとダンブルドア先生の声が永井一郎さんだということもあり、ヴォルデモート戦はほとんどヨーダvsドゥークー伯爵。いつ「腕を上げたのう、かつてのパダワンよ」というセリフが飛び出すのか期待したが、もちろんそんな事言わなかった。残念。
映画における超能力バトルシーンは好物なんだけど、『ハリー・ポッター』でそれを観たいかと言われると…。
このシリーズにはもっとファンタジー要素で楽しませていただきたい。正直なところ、バトルとかどうでも良いんだよね。
大体、魔法使いたちの攻撃はただ光線を飛ばすだけで面白みがない。これなら拳銃でも良くない?…なんて言うのは野暮ですよね。
原作は上下巻あり、総ページ数1300を超えるというシリーズ最長の作品。この超大作を2時間少々にまとめ上げたことは賞賛に値する偉業だと思いますが、情報を圧縮してしまったことに対する弊害も見受けられる。
ぶっちゃけ言ってしまって、今回の映画は目的がなんなのかさっぱりわからんかった😅
これまでのシリーズ作品は、タイトルを見ればどんな物語なのか一目瞭然。なおかつ、ストーリーラインも単純なのでスッとお話を理解することが出来た。しかし今回は、不死鳥の騎士団というものが存在する、ハリーがその騎士団を真似た学生組織を作る、というところまではわかるのだが、そこから先の物語をどう進めたいのかが最後まで不透明だった。どこかで「今回のお話の目的地はここです!」みたいなものを提示しないと、観客は何をモチベーションにして映画を観ればいいのかわからず、迷子になってしまいますよ。
クライマックスも、正直言って何やっているのかさっぱりわからん。
ヴォルデモートはハリーの「予言」ってものが欲しかったらしいんだけど、それって何?なんかスノードームみたいなものに入っていたけど…。誰が予言して誰がスノードームに詰め込んだの?それを保管しておく意味は?そもそもヴォルデモートは何であれを欲しがったの?すごく抽象的でどうでもいい内容だったけど…。
もう何が何やら全然分からん!!原作読めばわかるのかな?仮にそうだとしたら、映画だけでわかるようにしてくれよ!!
なんかシリウス・ブラックが死んじゃったけど、ここも何が起きているのかよくわからんかった。あのアーチなんなの!?
正直シリウス・ブラックって殆ど出番がないから、死んじゃったところで…。しかもオビ=ワン・ケノービと同じくらい殺される描写があっさりかつフワッとしていたので、驚くほどなんの感情も湧き上がらなかった。原作はもう少しエモーショナルだったような気がするんだけどね。
という事で、今回鑑賞して頭に残ったのは2点のみ。
1点目は、ピンクのババァがクソムカつくということ。
このババァ、本当に凄まじいほどのクソババァ。映画史を遡ってもここまでのクソババァはなかなかいないのではないでしょうか?マジで、ヴォルデモートやベラトリックスなんか目じゃないくらいの邪悪だったぞ。
「自分が『悪』だと気づいていない…もっともドス黒い『悪』だ…」という名言が「ジョジョの奇妙な冒険」(1986)にありますが、まさにアンブリッジはこのもっともドス黒い『悪』そのもの。ここまで胸糞悪い悪役にはなかなかお目にかかれません!
アンブリッジの何が嫌かって、リアルにもこういうババァ結構居るよなぁ…と思い出させてくれるところ。この辺はJ・K・ローリングの人物描写の巧みさ故なのでしょう。
このムカつくババァを見事に演じ切ったイメルダ・スタウントンの演技は素晴らしい!ヘレナ・ボナム=カーターの存在感が霞むほどの強烈なインパクト。あまりにも凄すぎて、今後スタウントンを映画で見かけたら、善人の役をやっていても「このクソババァ!」と罵ってしまうかも😅
もう1点は、やはり「スネイプ先生の過去」でしょう。これまでのスネイプ先生の言動の理由が明らかになり、彼の見え方が180℃変わってしまうという、素晴らしい過去回想だったと思います。
ここは原作を読んだ時にもめちゃくちゃ驚いた記憶がある。聖人君主として語られていた人物が実は……という展開は創作物には多々あるし、現実世界でもありがちなんだけど、ここまで上手く物語に落とし込めている例はなかなかないのでは?
こういう人間の二面性みたいなものをしっかりと描きこめる。J・K・ローリングの作家としての確かな手腕を感じずにはいられません!
という訳で、なんやかんや不満もあるものの総評としては結構楽しんだような気もする。陽キャの権化フレッド&ジョージのパンク・スピリットには、フリットウィック先生と同じようにガッツポーズしたくなったしね👍
ヘレナ・ボナム=カーターが出演しているということもあり『ファイト・クラブ』(1999)を想起させる、『ハリポ』史上最も血の気が多い1作でありました。
※なんかチョウ・チャンが可哀想な感じになっていたけど、みんなあの後ごめんなさいしたのかな?
丸メガネのイギリス人と東洋人のカップル…。やっぱりモデルはジョン&ヨーコ?
