「ボクシング映画にはカメがつきもの・・・」ロッキー・ザ・ファイナル kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ボクシング映画にはカメがつきもの・・・
『シンデレラマン』でもカメが出ていましたが、本家は『ロッキー』(1976)だったのでしょう。そのシリーズ第1作の監督ジョン・G・アビルドセンは、脚本を読むまではボクシング映画だということで乗り気じゃなかったのに亀のシーンを読んで快諾したのだとか。そして今作にももちろん2匹の亀が登場する。とにかく1作目のロッキーとエイドリアンとの恋物語を思い出させるシーンが満載でして、数年前に彼女がガンのため亡くなったという設定だけでウルウルしてしまうのです(亀だけで泣ける人は相当なファン!)。
『ロッキー5』ではロッキー・ジュニアとして自分の息子を登場させてしまったスタローンでしたが、実の息子も父親が有名俳優ということで学校でいじめられた経験があるのかもしれません。今回のジュニア(マイロ・ヴィンティミリア)の設定でも、父親との確執にはそんな経験も生かされていたような気がしてならないのです。そして、ストーリーはロッキーと一人息子との確執や最愛の妻を失った心の喪失感を埋めようとする気持ちと、最盛期を過ぎた人気者が残りの人生とどう立ち向かうのかというテーマを秘めたボクシングドラマとなっています。もちろん、若者が観ても充分に感動できるし、どん底にあっても這い上がって勝ち進むことができると勇気を与えてくれる映画でもあります。
この物語の中で最もいいと思われるところは、エイドリアンの兄ポーリー(バート・ヤング)も精肉工場を解雇され、ロッキー・ジュニアも勤めていた会社を辞めたというところ。また、マリー(ジェラルデン・ヒューズ)と彼女の息子にレストランでの働き口を与えたところじゃないでしょうか。ロッキー自身が人生の目的を見出す旅をすると同時に、周りの人たちにもそれを体験してもらうことを望んでいたような気がします。
『ロッキー』第1作を観たのが丁度30年前。感銘を受けてすぐにグレーのトレーニングウェアを買ってしまったのを思い出します。そして、今作では第1作への数々のオマージュが隠されていて、特に肉のサンドバッグ、生卵一気飲み、フィラデルフィア美術館でのガッツポーズなどには感涙もの。さすがにリトル・マリーの台詞までは覚えていませんでしたけど、映画の中でちゃんと解説してくれるので復習しておかなくても大丈夫だと思います。
マイク・タイソンだとか、ジョー・コルテスだとか、HBOの本物の実況アナだとか、ボクシングファンも納得の1作。ロッキー・ファンならば、シリーズに毎回登場しているデューク(トニー・バートン)だとか、第1作の冒頭に出ていたスパイダー(ペドロ・ラヴェル)なんて人物も興味深いところです(思い出せないけど・・・)。
【2007年4月映画館にて】