劇場公開日 1988年10月1日

「ダニーの言動が主体性に欠けているように感じた」旅立ちの時 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ダニーの言動が主体性に欠けているように感じた

2025年3月15日
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鑑賞方法:VOD

 反体制派の両親に振り回され続け、自分の意思よりも両親の意思を優先させ続ける人生を送ってきた青年ダニー。そんな彼が、転校先で恋人と進学先という、自分の意思で選択したい物事が登場する。自分の道は自分で決めるという、大人になっていくダニーの自己の確立が、今作のテーマなのだろう。

 だが、その割にはダニーの言動は主体性に欠け中途半端な印象を受けた。音楽を学ぶ進学先についても、ただ先生が才能あると勧めるから選んだ感じだ。なぜ音楽を学ぶのか、なぜこの進学先なのか、彼自身の熱意や明確な意思を感じない。

 愛する恋人よりも自分の人生を振り回し続ける両親と過ごすのを選んだ点にしても、同様に主体性に欠けているように感じる。現実問題として自立するにしても生活資金が必要で、それで両親に従うことを選択したとも思える。だが彼は「家族の絆はそれだけ固いから」と家族の関係性を両親に従う理由として上げていた。そのため生活資金については問題では無く、単に意思が弱いように映る。結局最後には両親と離れることになったが、それも彼自身による決断ではない。

 恋愛パートとか特殊な家族の関係性について悩む点とか、部分的には良いところもあるのに、全体的には中途半端な映画だった。シドニー・ルメット監督の『十二人の怒れる男』は良いのに、今作と『狼たちの午後』はいまいちだな。

根岸 圭一