「どうしてイギリスのようにアフリカ連合国にならないの?」ホテル・ルワンダ kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
どうしてイギリスのようにアフリカ連合国にならないの?
たまたま5月はジャン・レノ映画祭りとなりました。しかもエンドクレジットを凝視しても出てこない。ようやく観ることのできたホテル・ルワンダなのに、溢れ出る涙をこらえたいがためにジャン・レノのことばかり考えてしまいました。
「アフリカのシンドラー」などという呼び名も正しいのかもしれませんけど、今ひとつピンときません。人の命を救いたいと願う気持ちには変わらないのですが、ポール(ドン・チードル)の取った行動は、ただ家族を救いたいという一念が四つ星ホテルのマネージャーという地位も絡めて徐々に心が変化していったもの。計算ずくではない、魂の叫びを感じ取れるものだったのです。しかも最初は政府軍の将軍への賄賂から始まったものであったり、様々な懐柔策、スパイ衛星といった嘘だったり、切羽詰った人間から生まれた機転の利いた判断だった。
この映画の凄いところは、和平調停、大統領暗殺といった短期間の政変を上から見たまま描くのではなく、あくまでも一般市民からの視点に絞ったところにあるのではないでしょうか。外国人報道陣(ホアキン・フェニックス他)だって、ホテルから遠く離れたところまでは取材に出られないし、運良く撮ったスクープ映像にしても「怖いねと言いながら誰も助けに来ないさ」と現実と一線を引いてしまうマスメディアの弱さを露呈してしまう。こうして、現実にどのような悲惨な状況になっているかわからないリアルタイムの恐怖が客席にまで押し寄せてくるのです。
映像面においても、暴徒化したフツ族民兵の狂気に満ちた形相。朝霧たちこめる道には死体の山。何より怖かったのは一つ10セントで中国から仕入れたという鉈の束だった。なぜ同じ国の人間がここまで対立しなければならないのか・・・悲しくなるほどの宿命にしても、過去の列強による分断があったことを忘れてはならないのかもしれない。国連軍による平和維持活動だけを見ると、大国による内政干渉がなかったようにも映るが、裏には大きな力が働いているものだ。
難民に対して何も力になれない小市民さにもどかしくなるとともに、日本公開を応援する署名をしなかった自分を恥じてしまいます・・・