「人生のどん底で、自分の身の丈を受け入れる。」マグノリア image_taroさんの映画レビュー(感想・評価)
人生のどん底で、自分の身の丈を受け入れる。
公開当時から大好きな作品。Blu-ray化されたら購入しようとずっと待っているが、なかなか実現せず(ベルリンでグランプリ受賞してるのになぜだ!)、テレビ放映も滅多にされず、しばらく観る機会が得られなかったが…とある配信サービスで観れることが分かり、久方ぶりに観ることができたのを機に、これを書いている。
複数の主人公が織り成す群像劇で、3時間超の大長編のドラマだが、緻密なシナリオとスリリングなカメラワーク、見事な編集のおかげで全く退屈する瞬間がない。
主人公の全員がクライマックスに向けてどんどん人生のどん底に追い込まれていくが、各々がそのどん底において自分の身の丈がどれほどのものであるのかに直面することになり、それを受け入れざるをえなくなったことで、かえっていくばくかの開放感を味わうことになるという、マイナスの極点において天地がひっくり返るかのようにプラスへの鮮やかな逆転が生じるわけである。
その逆転の境目に、ある“天変地異”が起こる。公開当時、随分と話題になったし、観ていてギョッとするのは間違いないし、これでなければいけない必然性がよく分からない。私はきっと、物語に区切りをつけるために、突拍子もないものであればなんでも良かったのだろうと勝手に理解しているが、とにかくインパクトが半端ない。あんなものが文字通り土砂降りになるとは誰も思わないだろう。
映画の最後のシーンにカメラ目線で放たれる、涙目の微笑みが、焼き付いて離れない。この瞬間、人間なら誰もが弱さを持っていて、そういう部分も含めて誰かに受け入れて欲しいと思っていること、そうしてもらえることがどれほど喜ばしいことかということを象徴する瞬間だ。この作品が語りたいことがこの一瞬に凝縮されていると私は思う。