「アニメーションの名作」アイアン・ジャイアント レントさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメーションの名作
長年見たい見たいと思ってた作品をやっとこさ見れた。やはり期待通りの映画愛にあふれた作品だった。
たまに観客を舐めた作品に出くわすことがある。これくらいのを作ってれば観客は満足するだろうと観客を見くびったような作品だ。しかし観客は敏感だ。そういう作り手の根性は容易く見透かされてしまう。駄作とはそういうものをいうのだと思う。逆に本作のように観客を楽しませよう、良い作品を作ろうという作り手の気持ちが伝わってくるような作品を名作という。
まずアニメーションの質がかなり高い。日本のいわゆる薄っぺらいアニメーションと違い色彩も豊かで動きも滑らか。特に人物の表情が実に豊かに表現されている。そしてストーリーもありがちな物語でありながら観客をぐいぐい引き込んでゆくうまさがある。いい大人が思わず涙を流してしまうほどだ。
米ソ冷戦時代のあの時代特有の人々が抱いていた不安や恐怖が作品に投影されているのも実に見事だ。
ロボットは心の優しい少年といるときは穏やかで優しい、しかし憎悪と疑心にかられた人間たちに攻撃を仕掛けられると彼の表情や姿は一変し、宇宙戦争のウォーマシンのような恐ろしい姿に豹変する。これは人間社会をそのまま表現している。相手に愛情信頼を持って接すれば相手も同じように返してくれる、しかし相手に憎悪を向ければその相手も同じように憎悪を返してくる。まさに互いを疑い憎悪し合い戦争をやめることのできない人類の姿そのものだ。意外にこういう描写は簡単そうで出来てない作品が多い。
いわゆる「E.T.」のような異星人間交流を描いた作品でもあるが、「E.T.」は当時どうしても話題先行で実際見てみると少々感動の押し付けのような感じで全然感動できなかった。でも本作は素直に感動できた。
やはり名作はいつ見ても名作だなあ。