年下のひと : 映画評論・批評
2000年4月15日更新
2000年4月29日よりBunkamuraル・シネマほかにてロードショー
ビノシュ渾身の官能ラブストーリー
ジョルジュ・サンドと言えば男装の麗人、ショパンとの10年に渡る大人の関係が有名だ。
しかし、それ以前に彼女はまず女流作家として19世紀に名を刻んだと言う事実に「自由な女神たち」の女流監督ディアーヌ・キュリスが着目した。製作、脚本、監督を兼ねてキュリスが強い思い入れで描くのは1830年、貴族の妻の座に嫌気をさし、2人の子供と共にパリへ移住、男社会の文壇に乗り込んだ29歳サンドの若かりし日だ。「年下のひと」は人妻サンドが6歳年下の美貌の天才詩人、ミュッセと激しい恋に陥るところから始まる。
当時のスキャンダル女王の内面を深く掘り下げること。そんな試みから浮き彫りになるのは互いの才能に惚れながら、その才能に嫉妬し、傷つく芸術家の性だ。破滅的な衝突がそれぞれに生涯の代表作を作らしめたという史実に、35歳のジュリエット・ビノシュと23歳のブノワ・マジメルが役柄とリンクするよう実際に恋に落ちてしまっている点も興味深い。
ビノシュは感情過多な演技が鼻につく面もあったが、今回は若い恋人の攻めの演技を全編、受けで徹している。サンドが聖母のようにいい人なのが気になるが、いつになく抑制した演技がビノシュの美を際立たせている。
(金原由佳)