劇場公開日 2000年4月29日

ぼくは歩いてゆく : 映画評論・批評

2000年4月29日更新

2000年4月29日より銀座テアトルシネマほかにてロードショー

少年の苦境を淡々と見つめたドキュメンタリー・ドラマ

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「運動靴と赤い金魚」のヒットにより、“良質なイラン映画=児童映画”という図式がますます顕在化しているように思う。だからアボルファズル・ジャリリという常に少年を主人公に撮り続けるイランの映画作家がいる、と紹介した時、その作品が“イランの児童映画”という枠組の中で見られてしまうことは、仕方のないことかもしれない。だが、ジャリリの作品を見さえすれば、それがそういう枠組とは無縁であることがたちどころにわかるだろう。ジャリリの映画と典型的な“児童映画”を隔てるものが何なのか、簡潔に説明することは難しい。トリュフォーの「大人は判ってくれない」が“児童映画”でないのと同じようなものだ、と言えばわかり易いだろうか。実は、そのような映画を見ることは決して楽な作業ではない。だが、そこには表面 的な口当たりの良さを遥かに超えた感動が確実に待っているだろう。IDカードを持たない少年が困難のうちに仕事を探すプロセスを描いた「ぼくは歩いてゆく」は、そんなジャリリのエッセンスが凝縮された傑作だ。少年のひたむきな瞳、そしてラストに見せる笑顔の素晴らしさは、この映画が投げかける社会的テーマをも超えたところで感動的である。

市山尚三

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