インサイダー : 映画評論・批評
2000年5月29日更新
2000年5月27日よりみゆき座ほか全国東宝洋画系にてロードショー
マイケル・マン監督が描く2人の男の孤独な闘い
これは自らの信念に忠実であろうとした男たちの熱い物語である。彼らはあらゆる手を使って不正を隠そうと奔走する大企業、タバコ会社に真っ向から立ち向かう。それは正義感やヒロイズム、友情のためなどではない。もっともっとミニマムなもの。自分自身に課した約束を守るためなのだ。
となると当然、男たちが輝く。TVのプロデューサーに扮したパチーノ、その番組のインタビューアーことプラマー、そしてタバコ会社を告発する博士のクロウ。彼らが同性はもちろん、女さえもクーラクラくる男たちをシブく、ときに激しく演じてみせるのだ。
男を撮らせたらピカイチの監督マンは、これが実話であることを伝えるドキュメンタルな手法を駆使。が、それでもにじみ出るはやる心(?)が、そのクールな映像に熱を加えてわれわれを魅了する。彼の視線は男たちを讚え、敬っているのだ。
しかし、なんでこれが今年のオスカーで総スカンを食ったのだろう。彼ら3人の生き様に惚れなかったら男じゃない! といい切りたくなるほど、久々の男気溢れる映画なのに。すっごく不思議だ。
(渡辺麻紀)