リプリー : 映画評論・批評
2000年7月15日更新
2000年8月5日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー
若手スター勢揃い。夢の競演!
アラン・ドロンが演じた役にマット・デイモンが挑むというだけで、反発を買いがちなこの作品。やはり、ネックはマットであった。が、誤解なきよう。責められるべきは、あくまでアンソニー・ミンゲラ。「太陽がいっぱい」と異なり、貧しい青年リプリーが富豪の御曹司に、憎悪ではなく愛情を抱くという脚色は、成立困難な犯罪をめぐるサスペンスよりも、太陽に恋した男の哀しみを浮き彫りにするのには、確かに格好のアイディアだった。
しかし、それも、リプリーが魅力的な人物に描けていればこそ。なのに「グッド・ウィル・ハンティング」や「ラウンダーズ」で見せたマットの孤独や知的反逆児の香りを、ミンゲラがいかせていないので、リプリーがただのショボい男に。おかげで、ホモセクシャルな愛を描きながら、その手の色香がスクリーンに漂わない居心地の悪さとあいまって、マット・ファンとしてはいたたまれなくなるばかり。そういえば、アカデミー賞5部門ノミネートとはいえ、監督賞の候補にはなっていなかったっけ。アカデミー会員の侮れないセンスを見直しつつ、彼らとミンゲラの心を奪ったジュード・ロウの美しさにため息をつく。結局、この作品の価値はここにあるってことですね。
(杉谷伸子)