「美しい壁と扉、窓、連なる丘と麦畑、人」風が吹くまま myshaさんの映画レビュー(感想・評価)
美しい壁と扉、窓、連なる丘と麦畑、人
家屋も道も家畜小屋も全て繋がっており白い迷路のよう。群体を思わせる。
『友だちのうちはどこ?』でも美しい異国の風景を堪能したが、この作品も見所ばかり。
子供たちは好奇心を隠さず近づき、娘たちは珍なる人を覗き見つめさざめき、年配の人々は礼儀正しく、皆親切。彼らは協力し合って暮らしており、子供も医師も詩を暗誦する。
カフェの女主人は夫に不満があり夫にも言い分があるらしい。でも詳細は説明されない。
主人公は態度が悪くてすまなかったと少年に謝った。まあ本人は謝ったつもりらしい。でも少年は受け入れていない様子。だけれどもはっきりとした意思表示はされない。
イランで“珍しい”と目される葬儀の習慣がある宗教とは何だろう?でも描かれない。
主人公の仕事が何なのかもはっきりとは語られない。生き埋めになった青年(その姿は一度も映し出されない)は助かったのか。どのように助かったのか、後遺症などは無いのか。恋人とはその後どうなったのか。何ひとつわからない。全然サスペンスじゃない。
でもこの映画の中には物語がたくさんある。
14:38 洗面所 林檎(小さい!) 薄く広いパン(クレープのようで、折りたたんで腕に掛けられる巨大さ)
36:39 バジャールとジェイランのスープ
38:32 髭剃り ドア
(略)
01:04:50 タージュドラト(女主人)のスープ
01:08:49 パン作り(薄く広げる技法が素晴らしい)
01:21:35 壁にスープなど温められる小さい炉?
01:33:06 フンコロガシ(意外に速い!)
(略)
今ネットで話題のクルド人の話である点も興味を引いた。
日本とは全く違う文化・食。
でも日本と同じく生きるために良く働き、仲良く/諍い、折り合いを付け/反りあっている。
ああ全く違う、いや同じだ、どちらも人なんだねえ、じゃあ違ってて同じだよねえと少し落ち着いた。
その点でも大変ありがたい映画だった。