「新自由主義への警鐘。」ゼイリブ レントさんの映画レビュー(感想・評価)
新自由主義への警鐘。
本作が製作された80年代はまさにサッチャリズムを皮切りに日米でも行われてきた新自由主義的経済政策盛んな頃だ。
規制緩和で自由競争を活発にし経済が潤った反面、競争が激化し貧富の差が大きくなった。中曾根から小泉、安倍と引き継がれたこれらの政策により日本でも多くの国民が貧困になった。またコロナ禍では保険行政スリム化がまさに災いし、多くの犠牲者を生んだ。
本作はそんな新自由主義社会を裏で操ってるのが異星人であり、彼らに戦いを挑むのが貧しい日雇い労働者の主人公であるという。
人々を操っていた手法にこれまた昔話題になったサブリミナル広告が使われているが、実際のところその効果はあやしい。むしろSNSが隆盛を極める現代ではマイクロターゲティングのようなイメージ操作がこれに代わる。
ケンブリッジアナリティカ事件でも話題になったが、アメリカ大統領選やブレグジットの陰で利用されていたといわれるマイクロターゲティング。個々人の思想や好みを分析して狙いを定めピンポイントで心理誘導する手法だ。
そう、彼ら異星人は実に巧妙だ。私がYouTube動画なんか見ていても私の好みのリベラル動画ばかりが出てきて私を洗脳しようと企んでいる。嫌韓嫌中のような差別動画を見たくてもなかなか出て来ないのだ。このままでは私は彼らによってリベラルにされてしまう。正確にはこれはアルゴリズムというものらしいが、どちらにせよ恐るべき異星人の陰謀だ。
最近でも日本の防衛省の官僚に化けた異星人がインフルエンサーを利用して防衛費増のための世論操作を企んでいたというニュースもあった。
彼ら異星人に知らず知らずに操作されないためにはサングラスよりもリテラシーを身につけ常に疑問を抱き真実を見極めようとする目を養うことだろう。
本作は昔日曜洋画劇場で見たのだが、今回久々に無料配信にて鑑賞。当時はSFホラー大好き人間だったからカーペンターといえば「遊星からの物体X」みたいなのを期待してひどく裏切られた感があった。
まず脚本が酷い。主人公は異形のものと人間を区別できるサングラスを手に入れるんだけど、この時点で異形のものの正体はわからないのに姿が醜いというだけで殺しまくる。まさに色眼鏡で相手を判断してるわけだ。その後も眼鏡をかけるかけないで延々と続くゆるーい格闘シーンや何故か道端にゴミをすてていく清掃車等々、おかしなところがてんこ盛りのとんでもムービーだ。
今になって見てみるとなんとも普遍的なテーマを描いた作品としてカーペンターには先見性があったのだと感じられる。