X-メン : 映画評論・批評
2000年10月1日更新
2000年10月7日より日本劇場ほか全国東宝洋画系にてにてロードショー
異形の苦悩や哀しみが伝わる重厚ドラマ
アメリカン・コミックス史上最高の人気作待望の映画化といわれても日本の多くの観客にはあまりピンとこないだろうし、“「マトリックス」を超えたVFX映像”なんて売り文句も新鮮味に欠ける。でもこの映画、わかる人にはわかる面白さと見応えに満ちている。
わかりやすくいえば、これは「妖怪人間べム」に「科学忍者隊ガッチャマン」を足したようなヒネリの入ったヒーロー活劇。単純明解な勧善懲悪も、品行方正で健康優良児的なヒーロー像もここにはない。かといって「スポーン」のようなコケおどし的残酷描写もない。この手のコミックスの映画化としては極めて珍しい、内面で勝負する作品。つまり、派手でパワフルなVFXの見せ場ではなく、渋めの実力派演技陣がまるでシェークスピア劇のように繰り広げる重厚な芝居を堪能し、全編に漂う異形なる登場人物たちの苦悩や哀しみ、痛みを自分の心の傷と照らしあわせながら味わうのが正しい見方だ。
展開としてはほとんどキャラクター紹介程度で終わっているので確かに物足りなさがないわけではないが、悩めるヒーローたちをさらに繊細かつ重く描いていけば続きがさらに面白くなる要素は満載で、「スター・ウォーズ」シリーズより遥かに期待したい新シリーズの序章として必見だ。
(江戸木純)