劇場公開日 2000年9月2日

ひかりのまち : 映画評論・批評

2000年8月15日更新

2000年9月2日よりシネセゾン渋谷ほかにてロードショー

ウィンターボトムが描くロンドンの日常風景

ウィンターボトムのデビュー作「バタフライ・キス」には、ユーニスという孤独なヒロインが登場する。彼女はハイウェイ沿いを彷徨い、神の存在を確かめようとするように殺人を繰り返す。以前この監督にインタビューしたとき、このヒロインがサッチャー政権の弱者切り捨てによって社会からあぶりだされた個人を意味してもいることを知った。

この新作はその後のイギリス社会と個人の姿を描く作品といえる。街を華やかに彩る光は豊かになった社会を象徴している。しかし、生き方の選択肢は広がったものの、人々は理想を追ううちに自分だけの世界にはまり込んでいる。切り捨てられた弱者の次に見えてくるのは、一見満ち足りた家族のなかで孤立する人々の姿なのだ。異なる想いを胸に秘め、それを誰とも分かち合えない彼らは、時に光に飲み込まれそうになりながら街を彷徨う。

彼らが孤立感に苛まれるのはそこに家族という枠組みがあるからだが、この週末の出来事を通して、彼らはひとたび完全な孤児となる。そして、孤立するのではなく、ひとりであることを受け入れたところから、あらためて身近な者の存在を見いだし、言葉を交わし、手を差しのべる。その姿が胸に響くのである。

(大場正明)

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