「革命を企図したゲリラ戦」ウイークエンド abokado0329さんの映画レビュー(感想・評価)
革命を企図したゲリラ戦
ジャン=リュック・ゴダール監督作品。
「俺は現代に文法の終わりを告げに来た
夜明けが来た
あらゆる分野 特に映画の分野に」
若い男女がブルジョワの資産強奪を企てる週末の物語であるはずで、それをドキュメンタリー的手法で描くのだが、随所に「おとぎ話」が挿入され、最終的にはゲリラ戦になる意味が分からない(好き)作品。
上述の言葉通り、映画の文法を終わらせようとしている。車が事故に遭い、転覆するように、映画を事故らせ、転覆させている。例えば劇伴について。序盤の女の性的な語りに劇伴が挿入される。しかしそれは過度とも言える挿入で、観客の感情を高ぶらせるといった効果を発揮しない。むしろ耳障りな雑音でしかない。
また本作は一貫して引きの画で長回しが多用されている。それは演出を施さないドキュメンタリーな様子であるが、車の渋滞シーンでは渋滞を待つ人々の多様な動きが観察されるし、渋滞の長さーその舞台装置の準備の凄さーに圧倒されてしまう。さらに「アクション・ミュージカル」の8分尺の長回しではカメラが縦横無尽に動き、それに合わせて役者が動き、ピアノが鳴るのだから凄い。スタジオ撮影の劇を放棄したかにみえて、むしろそれ以上に演出をし、劇を生みだしている。だからかつての文法に終わりを告げるとともに新しい文法をつくりだしている。
さらに終盤のゲリラシーンで突如として挿入されるクローズ・アップのショットは、撃たれ死にゆく女の顔を映すのだが、その顔は主人公の女ではない全くの別人である。この「編集のミス」は、映画はたかがイメージであることとそれでも私たちはイメージに感動してしまうことを暴くのである。
かつての映画を葬り、革命を企図したゲリラ戦。この戦いの勝敗は、ゴダールが後の映画に多大な影響を与えたのだから言うまでもない。