バーティカル・リミット : 映画評論・批評
2000年12月1日更新
2000年12月9日より丸の内ルーブルほか全国東急・松竹系にてロードショー
アクシデント連発。心臓の悪い人はご注意を
まさしく、これはザ・お正月映画。なんたって、クレバス、雪崩、滑落、そしてニトロの大爆発と、次から次へと襲いかかる危機に身構えっぱなし。プロらしからぬ無茶連発の山男たちには呆れるし救助チームが遭難地点のどのへんまで迫っているのか見せ方が下手なので緊迫感が高まらないのが辛い、と難点も確かにてんこ盛り。が、そんな冷めた視線を注いでいるつもりでも、見終われば背中がバリバリに凝っていて、思いのほかハマっていたことに気づかされるあたりは、まさしく雪山版「パーフェクト・ストーム」だ。何も考えずに雪山コースター・ムービー(ジェットコースター・ムービーという言葉も既に「古い」が、その適度な古さ加減も安心して観られるお正月映画らしいってもの)をアトラクションとして楽しみたい人にはうってつけだろう。
いや、実はここにはトラウマを引きずる主人公をはじめとして、いくつもの濃い人間ドラマがちりばめられている。純情青年顔のクリス・オドネルだって、主人公にはまっている。でも、そんな人間ドラマも、連発される雪山アトラクションの前では薄味になる。この物足りなさが、大自然のなかでの人間のちっぽけさを思い知らせているのだった?
(杉谷伸子)