劇場公開日 2005年7月16日

「見どころは猫がかわいいところくらい」姑獲鳥の夏 Tenjinさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5 見どころは猫がかわいいところくらい

2025年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

単純

評判の悪さは聞いていたので一種の怖いもの見たさで見てみましたが、かなりひどいですね。原作の魅力の一割も表現できていないと思います。

まず、キャスティングがおかしい。中善寺は偏屈具合が足りないし、木場刑事はガサツなだけだし、関口は単に無口なだけ、と演者だけの責任でもないのでしょうが、原作のキャラクターの複雑な内面を理解せずに似た部分が一つあるだけの単純なキャラ造形になっています。シリーズのアイドル敦子にしても見た目はいいですが、物言いがきつくて愛嬌がないし魅力をスポイルしてしまってますね。邪推するなら、原作通りではつまらないから少し「外して」みたのかもしれませんが、いらぬ努力です。まあ、単に読み込み不足なだけかも。

映像も変というか、やたらと点滅させたりカメラワークに凝ってみたりと怪しい雰囲気を出そうとしていますが、効果的というよりわかりにくいだけに見えます。あと、めまい坂のセット丸出しのチープ感はもう少し何とかならなかったのか。

演出も丁寧さが足りません。とあるキャラがナイフで人を刺すシーンのあっさり感は唖然としました。それまで積もり積もったものがあるにしろ、過激な行為に至るには感情の高まりがあるはずで、いきなり刺したのでは何が何やらです。

最後の赤ん坊を渡すシーンにしても涼子の心境の変化を表すのに間を持たせず俳優の演技に任せていますが、原田知世さんには少し荷が重たかった気がします。舞台になる病院のスケール感のなさもあって、どうにも安っぽいシーンになっているのがもったいない。

原作はただのミステリーではなくて、キャラクターの内面描写など抒情的な面も魅力なのですが、そういう部分が表現しきれずに趣味の悪い怪奇映画(もどき)にしかなっていません。音や色がない漫画版のほうがはるかに出来がいいので、そちらを読んでもらったほうがいいと原作ファンとしては思います。

Tenjin