「格差社会の中、若者達が再び無軌道・無法的行動に走り出さないかとの心配が…」青春残酷物語 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0格差社会の中、若者達が再び無軌道・無法的行動に走り出さないかとの心配が…

2022年9月16日
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今年、
「戦場のメリークリスマス」を再鑑賞した時、
欧米文化の精神的優位性を謳いながらも、
特に上映妨害を受けたとは聞いていない
この作品の大島渚監督が存命だったら、
永久に不可能と思われる
日本版「南京事件」を否定論者に抗して
製作出来たのではなかったろうか、
との思いに至っていた。
そんな関連もあり、
ほとんど未鑑賞だった彼の若い頃の作品を
観ようと思っていたところ、
たまたま近くの図書館にDVDがあったので
この作品を初鑑賞した。

この物語では、金、金、金、なんでも金、
ある意味お金が動力源が如く、
全ての登場人物は行動する。
大島渚は、多分にこの風潮は、
当時の国民意識から逸脱した60年安保条約や
その後の所得倍増政策と無縁ではないと
語っているのだと思った。

登場人物は社会正義や社会秩序に
抗うかのように、また、若さの発露の如く、
お金を原動力にして
無軌道だったり本能の導くままに行動する。

この作品の登場人物の台詞を借りると
「青春を燃やさな過ぎた」
人種の私としては、
己の青春に対する若干の後悔と共に、
しかし、なかなか理解の及ばない青春群像
を見せつけられた気分だった。

しかし、その発露の道具として
この作品で扱われた“金”については、
私が社会人になった頃に比較して
中間所得層が激減して
格差社会化している現状の中で、
社会への抗いの象徴として
再び若者達が無軌道・無法的行動に
走り出さないかとの心配心も浮かんだ。

「戦メリ」以前の大島作品としては
「少年」「儀式」位しか観た記憶がないので、
この先、もう少し大島渚の世界を浸りたい
と思っているが、
結果、どんな彼の総評に繋がっていくか
楽しみになってきている。

KENZO一級建築士事務所