「川津祐介さんを偲んで」青春残酷物語 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0川津祐介さんを偲んで

2022年4月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

初鑑賞

監督と脚本は『愛のコリーダ』『戦場のメリークリスマス』『御法度』の大島渚

一応青春映画
タイトルに残酷がついているがグロ映像はない
少年誌や女子向け漫画雑誌のような恋愛はない
ヒロインに浜辺美波が抜擢されるような内容ではない

ヌーヴェルヴァーグとは奔放と反権威らしい
大杉栄みないなものか

インテリだからと言って残念ながら模範的なわけではない
少し古いがスーパーフリーの早大生がいい例だ

自分が鈍感なのかもしれないが石川達三の戦後の小説のような過ぎた自由を謳歌する若者に警鐘を鳴らすようなメッセージ性は感じられなかった

自己中な大学生の男と大人の階段を上る途中で転げ落ちた女子高生の出会いと別れ
そして悲劇的な最期
送り狼で女子高生をホテルに無理矢連れ込もうとする中年男を懲らしめる主人公
それに味をしめたのか女子高生を利用し美人局でいやらしい中年男たちからカネをまきあげる主人公
女子高生の方は大学生の方が好きで共に犯罪に手を染めていくのだが男の方はわりと冷たい
独占欲はあるようだがぜんぜん優しくないしビンタなんて当たり前

おじさんも男だし女子高生はどうかと思うが若い女とセックスしたいのは当然である
あのくらいの強引さがないと少子化対策にならないだろう
ただ願わくば股間で障子紙に穴を開けるような文学性は欲しいところ

事前情報はほとんど読まず本編も聞き漏らしたのかもしれないが女子高生という設定だったんだね
制服姿はなく全て私服なので彼女も大学生かと思った

女子高生は泳げないらしいが不恰好だが一応泳げていてとてもいまにも溺れそうな雰囲気は感じられなかった
そこはちょっと残念だった

大好きな男の子を宿しウキウキだったのに歓迎されず堕すことになり良心的?な値段で闇医者に掻爬手術を受け涙を流しながら病院のベットで横になるヒロイン
それを座って見つめる大学生
その背後で姿はないが闇医者とその元カノで女子高生の姉のおしゃべり
そして林檎をムシャムシャと齧り頬張る大学生
この一連のシーンが好き

なんてことない話だが映像にチカラがある

台詞がほぼ棒読みに感じなくもない
聞くに耐えられないほど酷くはない
そういう演出なんだろう
いまと時代が違うし東京の若者はこういう喋り方をしていたのかもしれない

60年代の安保闘争の時代
監督も左翼らしいが左翼運動を否定しているわけではない
若い男女が置かれた時代を切り取った緊迫感と虚無感が作品を彩る
そう感じた
日本の『俺たちに明日はない』みたいな映画だが銃社会じゃないのでラストはあれほど派手じゃない

主人公の大学生藤井清に川津祐介
ヒロインの女子高生新庄真琴に桑野みゆき
真琴の姉新庄由紀に久我美子
闇医者の秋本透に渡辺文雄
ヤケザもんの松木明に佐藤慶
取調べの刑事に佐野浅夫

昨今の週刊文春も一種の美人局じゃないかと勘ぐりたくなる
自称ジャーナリスト伊藤詩織のように正々堂々と法廷に立つべきだが宮澤賢治の雨にも負けずに共感したのだろうか墜ちた出版社にタレ込む方法を選んだ
いい歳して必死で強引なエロオヤジを擁護する気はないが報道のせいで楽しみにしていた映画を観れなくなるのは残酷な話
週刊誌の馬鹿ライターは儲かるし加害者はセミリタイヤにはいい機会だし被害者は胸のすく思いだろうしヤフコメ民は新しいおもちゃが見つかって気分がいいだろう
だが映画ファンにとっては逆恨みもしたくなるし只々迷惑な話
今更責任とっても遅いし三流雑誌の飯の種にならないよう責任ある行動を映画関係者に強く求めたい

野川新栄