トゥモロー・ワールドのレビュー・感想・評価
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【”ノアの箱舟”ディストピアワールドの中多大なる犠牲を払いながら”人類の子供”はトゥモロー・ワールドに向け出航した。今作は、絶望する人類の中に現れた”微かな希望”を描いた近未来SF映画なのである。】
■人類が繁殖能力を失った西暦2027年。
エネルギー省の官僚・セオ・ファロン(クライヴ・オーウェン)は、元妻のジュリアン(ジュリアン・ムーア)率いる地下組織・FISHに拉致される。
彼らの目的は移民が溢れる中、一人の移民女性を逃がすための、政府の検問を通過できる通行証を手に入れる事であった。
迷いながらも協力を決心したセオは、人類存亡の鍵”キー”をめぐる争いに巻き込まれていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・作品設定が在り得るかも知れないという”人類が生殖能力を無くす”と言う所から、荒廃した世界観が延々と映される。
夢も希望もない荒涼とした世界・・。
・だが、ある日”キー”と言う黒人女性が妊娠している事が分かり、地下組織・FISHは、彼女が政府に拘束されないように、ゲリラ戦を今まで以上に行って行く。
・そして、FISHのメンバー達の多大なる犠牲の中、キーは無事に女の子を出産する。
ー このシーンでの、赤子を抱いたキーと彼女に寄り添いながら破壊された建物の階段を下るセオ・ファロンに対し、銃を叶えた政府軍兵士たちが尊いモノを見る様に、銃を下げ道を開けるシーンが印象的である。
そこは、直前まで鳴り響いていた銃声は一切ない、荘厳な世界である。-
<そして、セオ・ファロンと赤子を抱いたキーは小舟に乗り海に漕ぎ出す。セオ・ファロンは腹部を撃たれており、血が船底に流れる中彼は絶命するが、そこに”TOMORROW”と船腹に書かれた巨大な船がゆっくりと近づいて来て、シーンは暗転する。
そして、エンドロール流れる中響く、子供達の笑い声・・。
今作は、絶望する人類の中に現れた”微かな希望”を描いた近未来SF映画なのである。>
TOMORROW
命が生まれ出るシーンが神々しい。
SF的要素が強めの作品かと期待して観始めたが、リアルな殺戮シーンがウクライナ、ガザ地区のドキュメンタリー映像と重なり、観ていて辛くなった。
クローン技術が加速してそう。
BS松竹東急を録画にて鑑賞 (吹替阪)
マリア様…誕生
久しぶりに、近未来を舞台とした凄い作品に出合うことができた。
2027年、子供が生まれなくなり、この先に望みもなく、人々は、ただただ年老いていくだけの世界。心も荒み、その中で起こる内乱や戦争、移民問題等、荒廃した世の中を舞台として、重いテーマをずっしりと覆い被せてくる。
不妊となった原因については、遺伝子操作なのか、ウィルスなのかは明確にはしていなかったが、作品の中で、「数年前に世界的に大流行した、インフルエンザ…」というセリフがあり、現在、世界が疲弊している新型コロナの現状を想起させた。
そこに、妊娠した移民の若い女性が現れる。主人公である、イギリス市民のセオが、政府軍、内乱軍の全てを敵に回し、人類にとっての大きな希望となる小さな命とその母を、命がけで守り抜いていくストーリー。
最初は、街も人の心も荒廃したシーンが続き、ホロコーストを彷彿とさせる移民への扱いに、辟易する感覚があった。次第にセオ達も内乱の中に巻き込まれ、後半の街中での銃撃戦は、戦争映画以上にリアルだった。いとも簡単に、無残にも人の命が亡くなっていく様は、テレビ画面で映し出されるアフガニスタンの現状と重なった。自分が戦場にいるかのような、迫力ある映像が、ワンカットで続いた。
そして、ラスト。戦場の中に響く赤ん坊の泣き声によって、銃撃は鎮まり、戦士や移民達が敵味方なく見守るシーンは、何故か、目頭に熱いモノが湧き上がってきた。正に、人類の希望となる、光り輝くマリア様の降臨のようなシーンであった。
本作は2006年作品であり、21年後の近未来を描いているが、2021年の現在にしてみれば、コロナの恐怖やタリバンの復活等、決してSF映画と片づけられる内容ではないような気がしてくる。
感動
子供が産まれなくなって久しい終末の世界。
移民の排除と弾圧、それに反抗するテロ組織とそれらを悪役として利用する政府。
もう、これでもかというくらいのディストピアです。
そんな中、妊娠した黒人女性を国外へ逃がそうとする物語。
まず素晴らしかったのが、命が生まれるという事の尊さと偉大さを荒廃した居住区の中で感動的なまでに描き切ったところだろう。まさかSF作品でこんな感動を味わえるとは思ってもみなかった。
そして、この映画を映画史に名を残す傑作たらしめているであろう「長回し」も素晴らしい。
厳密に言えば「長回しの様に見せた」シーンなのだが、高度なCG技術の多用によりどこが繋ぎ目かなんて全然分かりません。
凄まじい臨場感を演出していた、銃弾が着弾する時の煙やカメラに着いた血糊までCGであり、ビルのシーンも実は1階しかないセットで撮られたものだそうで、、、。
臨場感を演出する為の貪欲なまでの監督の姿勢に頭が下がりますが、今やオスカー請負人とも言われるエマニュエル・ルベツキ撮影監督の功績がここでも大きい様です。
とはいえ、映像だけの映画ではなく登場人物の心理描写や劇中音楽、ストーリーやテーマ性等、様々な観どころがある映画です。名作です。
細かい演出も好きです。脱走するシーンで逃げる前に他の車のキーを抜いておくとか、バッテリーが弱っていて押しがけをしないとダメで、それもなかなかなかからないとか、、、他ではあまり観ない演出で面白かった。「車はマニュアルの方がいざという時助かるな」って事は教訓になった。オートマだったら逃げれてなかったもんね。
長回しと寓話的な世界
冒頭のシーンから、長回しの緊張感がすごい!と思ったら、撮影がゼロ・グラビティやバードマンのエマニュエル・ルベツキさんだった。(レヴェナントも観なくては)
戦闘シーンがとても恐かった。デストピアな世界観も、SFだけどありえそうな気がしてきて恐かったし、実際に過去に世界で起こったことがあったり、今も起こっているような光景も描かれていた。
でも映画全体はとても寓話的で、そのバランスが変なんだけど凄く良くて、赤ちゃんの泣き声で戦闘が止むシーンと、そんなことはなかったかのようにまた銃撃が始まるところと・・
現実では赤ちゃんが泣いていたって銃撃は止まないということは、なんて残酷なんだろうと思う。
あと、子どもの声がうるさいからと近所に保育園を建てるのに反対する人たちに観てほしいとエンドロールで思った。
絶望から希望、そして未来へ
息子を亡くしたセオとジュリアンの夫婦に何があって別れることになったのか?ジュリアンは何故反政府組織のリーダーとなったのか?反政府組織の中の意見の対立とは?ヒューマン・プロジェクトとは何なのか?
物語の前提となる世界観については、多少説明不足と感じる部分もあるが、観終わってから考えてみると、これは物語をなるべくシンプルにする為に意識的に為されたことだったのではないかと思う。
子どもが生まれなくなり荒廃した世界で、最年少者がファンに刺殺されるという、いわばまたひとつ希望が失われた物語の冒頭から、新たな命、希望が次世代に託されたラストまで、この新たな命、希望を守るというシンプルさが物語の神話性を高めていると思う。
シンプルな展開の中で、ストーリーの起承転結に配置された長回し(に見えるように撮影された)の四つのシーンが効果的で、みどころになっている。
トゥモロー・ワールド感想
人類に生殖機能が無くなり、世界から子どもが居なくなるという設定が面白い。ただ、その世界が想像出来なさ過ぎて、人類最年少の子どもが死んだときの世の中の嘆きっぷりがやり過ぎな感じがした。いくらなんでもこんなに世界中が嘆くのか?と思ってしまった。でも、だからこそ終盤の、赤ちゃんを抱いて兵隊の間を歩いていくシーンがとても魅力的。ジュリアンが撃たれる車のシーンはカッコいい。さすがキュアロンって感じ。外人はみんな収容所に連れて行かれるという設定もあったが、これはアウシュビッツと変わらないのではないかと思った。歴史の知識が豊富ではないから、少し難しいとも思った。
生命の神秘、8分間の衝撃
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のアルフォンソ・キュアロン監督による近未来SFサスペンス。
舞台となるのは2027年、原因不明の女性の不妊が急増し、子どもが生まれなくなって18年が過ぎた。世界にはテロや内戦が頻繁し、国家は壊滅状態に陥る。唯一、強力な軍隊によってイギリスがぎりぎりの治安を守っている状態だ。そんな中、主人公の官僚にの前に反政府組織のメンバーである元妻が現れる。聞けば、彼らが保護する移民集団の一人が子どもを妊娠したという。
監督のアルフォンソ・キュアロンといえば、『ハリー・ポッター』の第3作目の監督を務め、シリーズをよりダークにした。この監督の演出が冒頭からショッキングだ。
序盤から重要人物が死に、ラストでは8分間ノーカットのシーンがある。これが非常に迫力がある。
まさに市街戦の戦い。その中をさまよう主人公を、手持ちカメラが追う。このシーンだけでも見応えがある。
人類最後の子どもは、人類最後の希望でもある。そして生命の誕生、生命の神秘を謳うのだ。
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