「街ぐるみで出身少年達の敵討。背景を見よう。」スリーパーズ movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
街ぐるみで出身少年達の敵討。背景を見よう。
4人の少年達の、罪と、それぞれの人生を通して、その人生は、その心の傷は、その選択はどこから??
その背景を辿って考えさせられる作品。
客観的に語られるだけでも、心境を想像すると作中起きる殺人事件は一概に4人だけが悪いとも言い難い。
ヘルズキッチンがどんな街なのかの概要説明の前半が、ラストに非常に効いてくる。
決して治安は良くないし、世帯収入は低め、野球チームや教会で地域の結束感がすごい地域でもなく、お金がなくても音楽や愛に溢れたあったかい地域でもなく、ギャングもいれば少年院卒の神父もいる。
アイルランド系プエルトリコ系イタリア系などのルーツを引く者達が、弱者とならぬよう守りあって暮らす暗黙の掟がある裏社会とも繋がるちょっと危ない街。
その街で、家庭環境などと悪ふざけが合わさって、友達同士つるんでは軽い気持ちで悪さをするシェイクス、マイケル、ジョン、トミーだったが、ホットドッグを食い逃げする延長でホットドッグワゴンで地下鉄の出入り口にいた無関係の老人を殺人未遂してしまう。
4人は少年院に1年半以内の期間で入るが、看守達に性的虐待や暴力など、人目がなくどこにも漏れない閉鎖的環境なのを良い事に人権無視の酷い目に遭う。特に酷いのが少年に性的嗜好があるノークス。他も同類。
出所して大人になったが、ジョンとトミーはギャングになる人生で、マイケルは検事補になり、シェイクスはライターになっていたが、それぞれが心に受けた傷は癒やされることなく封印して生きていた。
偶然再開したノークスを、撃ち殺したジョンとトミー。
その行いを、「sleepers」少年院上がりの危険なギャングの犯行として片付けられる見るのかどうか。
少年達の生育歴や少年院で何をされどんな傷を負い、それが将来にどう響いているのか。
考えさせられると共に、看守達への復讐の火蓋が切って落とされる。
してしまった罪は殺人の大罪で、ジョンとトミーは他にも殺害容疑にいくつもかけられていて、正当防衛どころか、普通は庇う余地がない。
ただし、看守達にされた約1年が4人の一生に与えている影響は限りなく大きい。
4人には幼馴染の女子キャロルがいるが、マイケルはキャロルのことが好きなのに、少年院で受けたトラウマゆえ、成人しても恋愛の発展が難しい。
検事補になった目的も、看守達への復讐。
4人とも、虐待で受けた記憶は封印し、信頼している人が相手のコミュニケーションでも、手を差し伸べられても、その時の記憶や感情が蘇るのが恐怖で、心を開けない。
ジョンとトミーはもはやギャングになるしかなかったのだろうし、ノークスを見て、迷いなく撃殺。
シェイクスは映画の上映時間記事を書く半人前ライター
になりながら、今もヘルズキッチンの色んな人と繋がっている。
大人になった4人だが、それぞれのベースには少年院での仕打ちがある。
受けた傷を復讐するためにマイケルとシェイクスが手を組んだ時、街の周りの大人達が動いてくれる。
その過程が、昔も今も目を覆いたくなる4人の現実の細い頼みの綱となり、温度を感じられる作品。
街の人々の裏も表もリアルに知る、善を語る偽善だけではないボビー神父をロバートデニーロが演じている。
4人を子供の頃からその親以上に見守り、頼られて応えようとしてくれる。
街のギャングの親玉、キングベニー経由でジョンとトミーの弁護を引き受けてくれた、アル中弁護士スナイダーを演じているのは、ダスティンホフマン。
陰鬱になる描写が多く、少年達に感情移入すると精神的にも、身体的にも、社会的にも、将来的にも、性的にも、全てにおける絶望的な孤独に苛まれる作中で、ロバートデニーロとダスティンホフマンのタッグの登場はとても心強く、安心する。
例え悪さをする少年達であっても、どんな形であれ、キングベニーやボビー神父は子供の頃から目をかけていて、大人になってからも訪ねられる存在でいる。他にもロレンツォやマイケルからの連絡手段として引き受けてくれる、街の小売店などもある。
「法廷で女神は目を瞑り、街で女神が見てる」
この台詞がとても印象的。
法律界ではお金で正義を買えてしまうが、確かに人々の真の姿は、暮らす街にあると思う。
そして、両親以外に味方になってくれる大人の存在があるのはとても良いなと。
一方で、大人が子供の最低限の信頼すら裏切ってしまった時、子どもの心につけてしまう傷はとても大きい。
子供達の一生に響く。
ケヴィンベーコンがもう顔だけで卑怯な小者の嫌な奴確定してしまうのだが、この作品も演じるノークスがひたすら嫌な奴。庇う余地がないので、成立する流れ。
マイケルが全てのシナリオを書き、抜け目なく必要資料を揃え、検事としてわざと負けて、ジョンとトミーの無罪を勝ち取り、看守達をそれぞれ抹殺する。
シェイクスも加担して計画を用意周到に進め、ボビー神父が嘘までついて成し遂げた後も、マイケルは人生を取り戻すかと思いきや隠匿生活を選ぶし、ジョンとトミーもギャングを続け数年以内に命を堕とす。
人生が晴れるわけではない。
でも、最後に4人と幼馴染の女の子キャロルが再開し、祝杯をあげる場面。
5人の姿が、輝かしい未来が待っていそうな子供達の結束勝利の映像として描かれたところがとても印象に残った。
幼少期から、全く違う環境があれば、その団結力と絆で、全く別物の人生になったかもしれないのに。
大人と、大人が作る社会の子供達への影響は大きい。
成人した4人も、社会を作る側に回っている。
検事もギャングもライターも、社会に与える影響は大きい。
その中で、少年院の中でけしかけて優良児だったリノが看守に殺されるきっかけとなってしまったマイケルも、リノの身内が看守を殺す機会を整える他、自らも裁判に負けて社会的に死ぬ形で責任を取る。
ウィルハンティングの時同様、恋人の高い心の壁を越えられない役としてキャロルをミニードライバーが演じているのは納得だった。
ケヴィンベーコンが西岡徳馬に見えたり、ジムキャリーに見えたり。
ブラピの若い頃は、ディカプリオよりペテンでなく、マットデイモンよりスマートな雰囲気で、ワイルド系も似合うが法廷にいても似合っていた。