ザ・リング2 : 映画評論・批評
2005年6月15日更新
2005年6月18日より有楽座ほか全国東宝洋画系にてロードショー
心理的恐怖に徹した演出に好感が持てる
永遠に呪いが続く特異なリング・ワールドに終止符を打ったことは、賛否が別れるだろう。だが、前作の流れをきちんと受け、悪霊サマラの呪いの真の目的に迫りながら、母子の絆のドラマとして見事に完結させている。即物的な恐怖は最低限に抑え、心理的恐怖に徹した中田秀夫監督の演出も、好感がもてる。
レイチェルと息子エイダンは、海辺の町で新生活を始めた。だが、町で呪いのビデオによる怪死事件が発生。レイチェルはビデオを捜して焼却するが、サマラはなぜか息子を狙い、予測不能の孤独な闘いを強いられる。息子が撮った写真にサマラが写っていたり、突如鹿の群れに襲われたり、常にサマラの存在と力を感じさせる映像が秀逸。サマラに心を侵食されていくエイダンの変貌も不気味だ。
井戸で死んだサマラは水を介してエイダンに取り憑いていく。中田監督は自作「仄暗い水の底から」を彷彿とさせながら、VFXを駆使してより鮮烈な水のイメージを繰り出す。一方エイダンは“眠らない”サマラに気づかれぬよう、夢を通して母親に救いを求める。このアイデアも巧みだが、水と夢に幻惑されながら息子の心を捜す母の苦闘をナオミ・ワッツが厭味なく体現し、胸を打つ。
(山口直樹)