劇場公開日 1960年12月15日

「スパルタカスは民衆が創り出した架空の人物か…」スパルタカス KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0スパルタカスは民衆が創り出した架空の人物か…

2022年10月12日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

TVでの3度目位の鑑賞だったと思うが、
改めて大作としての風格には驚いた。
一部は合成とは言うものの
1万人のエキストラを動員したと言われる
スパルタカス側の大移動や合戦シーンは
昨今のCGによる同様のシーンでは
感じ取れない、正にスペクタクル巨編だ。

スパルタカスと奴隷女性の恋、それと
ローマ帝国内の権力争いを縦軸と横軸に、
古代ローマ時代の反乱を描いた長編ドラマ
だったが、
内容については、
スパルタカスの反乱への大きな動機になった
自分を負かしながらも命を助け
権利者に襲いかかった黒人剣闘士への想いを
強く心に留める要素が不足しているように
思う点や、
カーク・ダグラスは名優だが、
決して眼で演技出来るタイプでほないので、
ラストの磔のシーンでは
彼は既に亡くなっている前提での
妻子との別れに設定して頂いた方が
より自然に感動しただろうと思う等々、
幾つかの描写が気になってしまった。

また、
ローマ帝国、奴隷制度、剣闘士、の
共通点を持つ他の作品との比較の上では、
「ベンハー」のキリスト教、
「グラディエーター」の亡き家族への想い、
それぞれの要素がもたらす重層感に対して、
この作品も2つの軸が交差することによる
展開が何度かあることにはあるが、
展開のリズムの上でのメリハリ感がなく
平板になってしまった印象を受けた。

この作品は、プロデューサー側や
脚本のトランボとの確執もあって、
キューブリックがこの映画を自分の作品とは
認めなかったというのは有名な話だが、
彼の思い通りに演出出来た作品も
是非観てみたかったものだ。

それにしても、捕虜となった囚人たちが、
誰もが「私がスパルタカスだ!」だと
ローマ軍を幻惑させ、スパルタカスが涙する
シーンは感動的だったが、
ひょっとして、実は
スパルタカスなどと言う人物は存在せず、
ローマ帝国の支配に反抗する象徴として
民衆の心意気が創り出した架空の人物
だったのではないかと想像までしたが、
史実はどうだったのだろうか。

KENZO一級建築士事務所