「海上の少女、大海を知らず。」弓 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
海上の少女、大海を知らず。
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なんとも不思議な物語。
おっちゃんに誘拐され、10年間船に監禁された少女ということもあり、受け入れられる人とそうでない人がはっきり分かれる作品だと思います。
確かにおっちゃんの欲望のための行動はキモい。
でも、なんだろう。このおっちゃんなんだか憎めない。物語前半では一緒に結婚してほしいとさえ思ってしまった。
我々も洗脳されているのでしょうか?
そしてこの映画の最大の特徴である、このふたりだけ喋らないということ。
彼らのコミュニケーション手段は弓。
矢を放ち、音楽を奏でることこそが彼らのセリフ。
最終的に少女が船に戻り、おっちゃん側に靡いたのも他の領域のものには理解し得ないふたりだけの絆みたいなものなのかなと思ったり。
弓占いの部分はほんとに危なっかしいのに音楽のせいでエモーショナルに。
大学生が来てからの緊張感も弓を張っていくようで、とても良かったです。
ラストの結婚はおっちゃんの幻想なのでしょうか。
おっちゃんの魂が最後のあの矢に込められて、純粋無垢な白装束の少女の股間に突き刺さる処女喪失。
あの瞬間今までの少女の束縛から放たれ、大人の女性となって新たな海へ漕ぎ出していく。
とにかく不思議な90分間でした。
少女役のハン・ヨルムさんは本当に名演でした。
細かい表情の演技が素晴らしかった。
大人っぽい妖艶な顔から大学生に見せる乙女な顔、あどけない幼さのなかに女性らしい強さ、凛々しさを感じました。
この犯罪行為を美学としてしまう自分も相当ヤベェやつだなと思いますが、美しい音楽とあの生活感漂う船の不思議な空間、雰囲気は万人受けすると信じています。
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