「【この原作の映画化の難しさを証明してしまった作品】」デューン 砂の惑星 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【この原作の映画化の難しさを証明してしまった作品】
デヴィッド・リンチの言葉からも推察される通り、この作品は、編集が多くて、SF大河小説「砂の惑星」のあらすじを追うような感じて、内容や表現について評価できるような状況ではないと思う。
40年近く前の作品なので、ハイテク技術も未発達だし、そうした陳腐に見えることを除いても、やっぱり、ちょっと辛い気がする。
どちらかというと過度な編集前の長尺版の方を観る方が良いように思う。
ただ、キャラクターや建物、都市、宇宙船(ものによるけど)デザインは、デヴィッド・リンチならではで、デザインをこのままで、現在の技術で作り直しても、古臭さなどないような斬新さを持っていることは確かだ。
それに、若いパトリック・スチュワートや、スティングを見られるのは楽しい。
この原作でSF大河小説の金字塔とも言われる「砂の惑星」は、昨今の宇宙物理学の最新の情報を取り入れたり、哲学的に昇華されたSF小説と比べて、大味に感じられるかもしれない。
どちらかというと、シェイクスピアやギリシャ神話の戯曲のような構成やテンポだ。
家柄、領主同士の対立、後継ぎ、愚鈍な王、昔ながらの家臣、預言者然と振舞う占い師、裏切り者、既得権益の維持に躍起な組織。
これに、合理主義と神秘主義の対立、合理主義と非理性主義の対立、リーダーと部下の信頼と対立、血筋、裏切り、暗殺、復讐などの要素をちりばめて重層的な物語展開になっているのだ。
そして、ポールがフレメンを率いるところは、実は、イスラムのムハマンドにヒントを得ているのではないかと思う。
西洋的な社会の知識を持ちながら、砂漠の民を率いるのだが、一神教であるキリスト教を知り、ムハマンドは、アッラーを一神教としてイスラム教を強大に組織化していくのだ。
そして、原作では、それぞれの物語が個性を持って主張され、特にフレメンについては、理解を深めるようにアレンジされているように思えて、この映画のあらすじを追うような通常版のこの作品は、こころが踊らないのだ。
2021年10月15日公開の「DUNE」は、実は、前編らしい(との情報)。
だから、もし、先のストーリーが気になる人は、大変に読み易くなった新訳版の「砂の惑星」1-3巻を読むことをお勧めするし、映画だったら、可能であればデヴィッド・リンチの「DUNE(長尺版)」をご覧になられた方が良いように思う。
デヴィッドリンチに敬意を表して、ちょっと加点😁