「達成されることのない営み」トーク・トゥ・ハー えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
達成されることのない営み
それぞれ、こん睡状態に陥っている恋人(片方は?だけど)を持つ男性ふたりの物語。
エーリッヒ・フロムという思想家は「愛するということ」という著作の中で、
「愛」とは孤立の克服であり他者との合一を目的とする、と述べている。
そして、その営みは永遠に達成されることはないが、
だからと言って停止することもない、とも述べている。
本作では、この達成されることのない営みが、
孤独に悲嘆し畏怖する主人公と、倒錯的で偏狭的な看護人との対比で、
情感的に描かれている。
「オール・アバウト~」に続き、本作でも劇中劇が多用されているが、
特に印象的なのが、縮む男のサイレント映画。
本筋の孤立の克服をシニカルだが深刻に表現している。
ペドロ・アルモドバル監督作品はふたつめ。
なんというか、言語化できない、スレスレのところを突いてくる演出が真骨頂なのか、
観終った後の、良い意味での後味の悪さは独特。
本作のタイトルから、その辺への監督の拘りは伝わってくるし、
ラストシーン、バレー教師と主人公の会話なんかは、実に象徴的。
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