ストレンジャー・ザン・パラダイスのレビュー・感想・評価
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完全にハマった…
ジム・ジャームッシュ監督作は「コーヒー&シガレッツ」、「パーマネント・バケーション」に続き3作目。
ストーリーはハンガリー出身でNY住みのウィリーのところへブタペストから従妹のエヴァが来る。二人は仲が悪く… というもの。
上記の2作品はそこまで自分の好みの作品ではなかった。だが、本作は完璧に自分のツボだった。ジム・ジャームッシュ監督特有のシュールな笑いが抜群に最高で且つ、モノクロで長いワンショットのカメラワークが絵画を見ているかのように錯覚させる。
たわいもない会話なのに見ていて眠くならないのは何故なのだろうか… この日常のような非日常を見ている感じが心地よいのだと思う。 各キャラが言葉に出さないだけで内に秘めているものがある感じもミステリアスでなかなか興味深い。
ハンガリー出身であることを恥じているウィリーは意図してブタペストに帰ったのか、エヴァはなぜ結局モーテルに戻ってきてしまったのか、意外と考えれば考える程深い作品。
他のジム・ジャームッシュ監督の作品が好きな人にはたまらない作品なのでは。私は鑑賞後、新たな映画の世界を垣間見れた気がして高揚感に浸っていた。
楽園以上に奇妙(ストレンジ)な存在とは?
サブカルチャーを30年以上前に牽引した傑作
今観ても本当にサブカルチャー映画だ
手作りで荒削り、しかし何かが違う空気感が充満している
何故に白黒なのか、何故にぶつ切りの暗転カットつなぎなのか、長回しを多用する狙いは何なのか
東京物語 小津安二郎の影響?
確かに競馬の出場馬の名前がトーキョーストーリーだ
そんなことよりもこの空気感、雰囲気に浸る事自体が本作の楽しみ方なのだろう
若い三人の男女、二人はハンガリー出身だ
ハンガリーは中欧にあり歴史は古いが元々から田舎の国だ
しかも当時は冷戦真っ盛りの東側共産圏ブロックの国で鉄のカーテンの向こう側の国だったのだ
今日のように簡単に飛行機で行き来きできる政治環境ではなかった
だからロッテおばさん初め登場するハンガリー人は何か特殊な事情と強力な政治的つてが無い限り、出国して、ましてや西側の中心米国本土に居住なぞできるわけがない
またもし帰国したら米国に戻れるかも極めて怪しいのだ
下手をすると投獄されるかも知れないのだ
そういう現代とは全く違う時代だったことを踏まえなければならない
もっというならば、ハンガリーは鉄のカーテンが最初に破れた国でもある
本作の5年後の89年5月隣国オーストリアとの鉄条網が開かれ鉄のカーテンの崩壊、ベルリンの壁崩壊、共産圏ブロック崩壊に至る出発点になった国なのだ
そのハンガリーの冷えきった国がこれから春に向かう微かな兆しを本作は裏側で表現しているのかも知れない
もう一人はアメリカ人
しかし彼もNYではウィリーしか友達はいない
ウィリーが米国人になりきっていた外国人と知り、彼は自分自身の都会での孤独さを知るのだ
彼も恐らく米国内の田舎の出なのだろう
つまり全員が異邦人(ストレンジャー)で、アメリカの何処に行っても孤独なのだ
ウィリーは10年もNYで暮らしハンガリー人であることを捨て忘れようとし、米国人に成りきろうと努力すればするほど孤独なのだ
その孤独感は白黒の粗い粒子の映像とクリーブランドの寒々しい氷雪でこれでもかと表現されている
終盤の温暖なパラダイスであるはずのフロリダでもそれは変わらない
寒々しいのだ
結局エヴァと言う言い訳を得て彼はハンガリーの首都ブダペストへの直行便に乗り逃げ帰るのだ
エヴァもまた結局米国にいても孤独であること、しかし独りでは寂し過ぎることを自ら悟る
それでもあんな国に帰国するよりはマシかとモーテルに戻る
エディは米国人であるはずなのに独りぼっちを嘆く
とどのつまりみんな孤独のまま、映画が始まり、終る
その三人の心証風景への共感を強くつたえる力が本作には確かにある
初めて上京して独り暮らしを始めた頃の記憶と重なる人は多いのではなかろうか?
タイトルのストレンジャー・ザン・パラダイスの意味とは何のことだろう?
楽園以上に奇妙(ストレンジ)な存在とは?
楽園とは単にフロリダではなく、自由のない故国ハンガリーから見れば自由の楽園アメリカのことだろう
ではアメリカ以上に奇妙な存在とは一体何か?
それは彼ら三人だ
それは、そんな楽園で何で孤独なのだ?
なんで自由の無いハンガリーに戻ってしまうのだ?
逃げ帰ってしまうほど懐かしの故国が恋しい楽園であるなら、そもそもなんでアメリカに移住して来たのだ?
そして自由の国アメリカに生まれたエディはなんで異邦人とつるむしかない程孤独なのだ?
それはまた奇妙な不思議な話だ
タイトルの意味はつまりその問いかけなのだ
劇中のエヴァが聴くスクリーミン・ジェイ・ホーキンスはクリーブランド出身の黒人R&B歌手というよりはブールズ歌手
掛かる曲は I Put a Spell on You 1956年のヒット
公開当時からでも30年近い大昔の誰も知らない忘れ去られた曲
監督が好きな歌手という
渋い好みだ
しかし1984年のあの当時に、共産圏の中欧から来たばかりの若い女性があの曲を知り得て好きになるかというと相当に無理な話だが、野暮は止めよう
従妹が来る。今度は友達連れて従妹に会いに行く。3人でバカンス。はぐ...
日常の中の静かな非日常
映像はシャレているといえばそうなのだが
ロッテおばさん
男男女のモノクロオフビートロードムービー
ハンガリーから渡米してきたいとこのエヴァと共にニューヨーク→クリーブランド→フロリダと車で旅をする。
掃除機をかける=ワニを窒息させる。
なが回しワンカットで暗転が細かく入って場面転換する。
セリフの中に「晩春」「出来ごころ」「東京物語」が出てきた。
ボーッと眺めるように気づいたら終わってたみたいな映画だった。
ラストは人違いで大金をゲットしたエヴァが飛行機に乗るっつっといて乗らずに宿に戻ってきて幕。
ジャームッシュ節
小津安二郎
評価5の映画史上最高傑作10選+α
ただダラダラと・・・、しかし。
行き当たりばったりな登場人物と物語
総合45点 ( ストーリー:30点|キャスト:65点|演出:30点|ビジュアル:60点|音楽:60点 )
やたらと無愛想な登場人物たちは全く笑うことなくぶっきらぼうに最小限の会話をする。物語は行き当たりばったりで、特に目的もなくその日暮らしをする三人がひたすら描かれる。物語らしい物語もないままにそんなどこにでもある日常の描写が続く前半は退屈した。功夫映画を横一線で見ているだけの場面が何分も続くと、もうわかったからさっさと次の場面に行ってくれと願った。物語じゃなくて雰囲気を追いかけた作品なんだろうが、ここまで物語が薄いと耐え難い。登場人物がいい加減なやつらだから余計にそう思った。フロリダに行ってからの結末にやっと映画らしい展開が出てきて持ち直した。
好き嫌いがはっきりと分かれる作品だろう。描写の中に登場人物の心理がわかるようになっているが、逆に言えばそれだけであって話はとにかく進まない。最後が面白いし爽快な部分もあるのだけれども、前半がちょっといらいらしたし、やっぱり物語がはっきりしなくて好きではないかな。
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