「いとこ」ストレンジャー・ザン・パラダイス きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
いとこ
いとこ
ハンガリーからニューヨークの いとこウィリーを頼って転がり込んできたエヴァ。
1年後その従兄妹を探してクリーブランドまで旅をするウィリーのお話し。
+ + +
従兄妹、いますか?
どこに? 何人?
従兄弟・従兄妹って、特別に不思議な関係だと思う。
あれは、僕らに近すぎる親きょうだいでもないし、遠すぎる友達でもない。
ただの親友とかいうのでもないし、もちろん恋人になることなどありえない。
なんだかふわふわした宙ぶらりんな関係。
でも血がつながってるという。
小さい頃、いとことは夏休みに何度か会ってはいても特別な用事=お葬式とか結婚式とか=でなければ滅多に顔を合わせることもないね。
でも、どれだけ遠くにあっても忘れたりすることなど決してない、いとこは独特の存在だ。
なぜなら
どんな親に育てられて、どんなふうに育ってきたのか、そしてたぶんどんなふうにその親に苦労して大きくなってきたのか、僕らは彼らを知っている・・
「同じにおいがする」から。
いとこ同士は、言葉無用で、お互いの境遇を感じ取ってくれる=わかってくれる特別な存在なんだ。
「同じにおいがする」んだよ。
エヴァは髪はくしゃくしゃ。愛想は悪い。変てこなミュージック・テープをかける。気に入らないよね。でも音楽の趣味は違っていても、ずっと気になる存在なんだよ。
目で追う、心で追う、
幸せであってほしいと
いとこの姿を追いかけてしまうのさ。
従兄妹の不遇を救うために人生のかなりの部分を費やして援助しちまったアホな男(=僕のことなんですけど)には、それがよくわかる。
ウィリーは馬鹿な兄貴だ。
でもエヴァは嬉しくって幸せだったのではないだろうか。
短いシーンごとに画面が暗転する、
どこで THE END の文字が出ても違和感なく味わい深い。
これは、どれだけ盛り上がっても不思議ではない各エピソードでも、すべて毎度一旦暗転させながら物語を”賢者タイム“に戻させている。鎮静作用。性愛には発展させない。
監督は映画全体を地味で、しかし滋味あふれる静かなロード・ムービーに仕上げた。
「初めて来たのに同じ景色だ」
「どこかで見たような部屋ね」
ドラマチックでない日常と既視感がこの「いとこの映画」を僕のものにしてくれる。
あと、
ジム・ジャームッシュの配役にはいつも気のいい友だちがついてくる。
そこがまたとてもいいんだ。
やさぐれた余韻がいいんだよ。
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今晩は。
そういえば、昨晩観たアキ・カウリスマキ監督の、「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」にジム・ジャームッシュ監督がチョイ役で出演していました。
オフビート感ある作品を作り続けて居るお二人は、若いころから交流があったのだなあ、と嬉しくなりました。では。
今晩は。
コメント有難うございます。
今作は、私は学生時代に友人達とDVDと名画座で観てジム・ジャームッシュの独特な世界観に嵌った作品です。
きりんさんはきっとお好きではないかな・・、と思ったのですが、良かったです。お時間が有れば「ダウン・バイ・ロー」や、「コーヒー&シガレッツ」「ナイト・オン・ザ・プラネット」なども同傾向にありますよ・・。(ジョン・ルーリー、好きだったなあ・・)
最近、アキ・カウリスマキ監督の作品を見返していて、ジム・ジャームッシュ監督とは違うオフ・ビート感を楽しんでいます。では。
エンディングテーマ、
“I PUT A SPELL ON YOU” byジェイ・ホーキンズを改めて動画で聴いてみた。
「お前に呪文をかける」というこのタイトルがスラングで「お前に粉をかける」という意味合いがあるなら、(たぶんあるな)、なおさらウィリー兄貴の気持ちを受け取っての熱唱。
寒々とした冬景色のNY〜オハイオ〜フロリダの旅に火を灯す熱唱。