「科学を信じて」スチームボーイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
科学を信じて
長編アニメーションとしては『AKIRA』以来となる大友克洋監督の2004年の作品。
公開時は『AKIRA』のような作品を期待したのか、ファンからの反応もイマイチ、興行的にも不発に終わった。
が、月日が経って久し振りに見てみれば(多分劇場で観て以来)、大傑作!とまでは言わないが、“空想科学冒険活劇”としてそれなりに面白い。
謎の発明“スチームボール”。
それを巡る争い。
少年の冒険。
THE王道!
大友克洋もただ純粋にサイエンスとアドベンチャーの娯楽活劇を作りたかったんだと思う。
『AKIRA』みたいな作品が大友克洋、と期待するのはこちらの勝手、酷な事でもある。
映画監督は自分の作りたいものを作ればいいのだ。
作画力はいつもながら圧倒的!
メカニックなどは緻密でディテールまで拘り抜き、中でも空飛ぶスチーム城は蒸気の質感共々圧巻!
また、19世紀のイギリスの街並みも素晴らしく、雰囲気も醸し出す。
ストーリーやキャラ描写がちと弱いのは否めないが(お嬢様がウザい…)、メッセージ性は充分。
科学とは、何なのか。
人類の夢であり、英知であり、力であり、財産であり、富である。
が、それが戦争に使われる不条理…。
科学は戦争の為の武器でしかないのか…?
また、主人公の少年レイにとっては、科学を巡って祖父と父が対立してるのも辛い事だろう。
暴走する父と、それを止めようとする祖父。
単純にどちらが善悪じゃない気もした。
父も戦争の兵器の為に科学を使ったのではなく、ただただ科学の力を証明したかったのだ。
しかし、それが時に世界を脅かす…。
そんな中でレイは、悩みながらも、純粋に科学を信じて…。
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