劇場公開日 2007年1月20日

それでもボクはやってないのレビュー・感想・評価

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4.5万能なシステムはないので

2008年1月4日

たまたま仕事でこの半年間に30名くらいの現役弁護士のみなさん・裁判官・検事の卵の方々にインタービューをする機会があり、そのインタビュー目的とは別のところですっと腹落ちしたことが2つあって。
1.これまで「弁護士」の知り合いが一人もいなかったので・・・「弁護士」が総体的な「職業」としてしか理解できていなかったのが、具体的な「人」と紐づけて実感として理解できるようになったこと。
2.「裁判」という制度(現場)が「人」によって動いていることは知識としてはわかっていたけれど、そこに関わる「人」が自分の頭の中では無機質なシステムの一部だったのが、はっきりと血の通った「人」によって動いているんだという実感が備わったこと。

この映画は「痴漢えん罪」という理解しやすい事例を使いながら、それ以外のあらゆる刑事裁判における問題点を伝えている。監督である周防さんも、この映画に関するあらゆる評論も、それについてはほとんどが触れているところ。

映画の中で語られる、裁判は「それが真実かどうかを見極めて正しい判断する場でなく、今ある限定的な情報の中で、とりあえず白か黒かを決める場所だ」という現実。

正しいかどうかはわからないけれど、その問題点は、「裁判」という領域だけでなく、「政治」でも、「医療」でも、もっと近い僕らの「会社」や「学校」でも、すべてのシステムが内包しているんじゃないかという感じさえする。

「システム」というのは自分から縁遠い存在であればあるほど、目にすることがない領域であればあるほど、「システム=あるインプットに対してできるだけ正しい1つの答えを出している」という期待を抱きがちだけれど、実際にはその「システム」のほとんどが不安定で、常に真実だけを目指して動いているとは言えない、さまざまな思惑の結果としての「人間の感情」で成り立っているんだということを、しっかりと認識したほうがよさそう。

今日電車で乗り合わせた2人分の席を占領して大いびきをかいて居眠りしている人が、いつか自分を裁く弁護士かも知れないし、自分を治療する医者かも知れないし、自分の子どもを教える学校の先生かも知れないということ。

たとえば「テレビ」についてもそう。「お菓子会社」についてもそう。

この映画を見て、多くの人が憤りを感じると思う。ただそれは「痴漢えん罪」を始めとした刑事裁判制度に対する憤りにだけではなくて、ひとつひとつのシステムに対して向けなければいけない感情なんだ、と思ったりもする。

それに対して、さあ、明日から何をすればいいんだろう、なんて考えることがしっかりとできれば、世の中もっと良くなっていくのかもしれないなあ、と。

ま、そんな重い話はさて置き、娯楽としてとても楽しめる映画でした。そぎ落とす作り方をしていて、テンポが素晴らしい。2時間30分という長尺ながら、尿意を忘れるおもしろさという触れ込みだけれど、この日はすごい寒くって、紅茶をがぶ飲みしながらみてたので、さすがに最後はきつかったっす。うう。

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ひらつか

5.0怖い。怖すぎる。冤罪はこうやって作られる。

2007年2月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

周防正行監督の『Shall we ダンス?』以来11年ぶりの作品。その11年ぶりの作品は、これまでの周防作品とは全く異なる社会派の映画。しかもその内容は、単に映画と言う枠を超え、ほとんどドキュメンタリーと言ってもいい様な、非常に重い、意味のある内容となっています。
重すぎます。通常、映画と言うものは娯楽作品なので、何らかのストーリ展開や、明るい結末に向かって、何らかのドラマがあるものですが、この作品には一切そう言う要素はありません。それが先の「ほとんどドキュメンタリー」と言う感想に出ています。敢えて結末は記しませんが、「えーーーっ!」と言う、結構救われない結果(ほとんど結末を言っていますね)になっています。無実の人が、犯罪者に仕立て上げられていく。怖すぎます。これほど救われない映画は珍しい&初めてです。
この作品では、周防監督自身がいろいろなメディアで公言しているように、日本の裁判制度の問題点が凝縮されています。警察の留置場に長期間拘留しての威圧的な取調べ、通知されない被疑者の権利、(特に痴漢犯罪では)行われることの無い捜査と被害者証言だけでの犯罪立証、やる気の無い当番弁護士、被告側への過度な立証責任などなどなど・・・。まぁ、当番弁護士の件に関しては、この映画の場合はいろいろとその理由もあるんですけどね。それにしても怖すぎる話です。日本の刑事裁判の有罪率は99.9%だそうで、70%~80%程度と言われているアメリカの有罪率と比較すると驚異的です。この有罪率の異常は低さは、日本の警察・検察が優秀であるという(本当か?)理由を差し引いても、明らかに異常。これでは裁判ではなくて、単に量刑を決めるだけといっても過言ではないですね。劇中、「裁判官も官僚だから」という意味合いのせりふが出、また、無罪判決を裁判官が書く難しさも語られていますが、それでも酷すぎます。これを見ると、犯罪者にならないためには、自己防衛しかないということを心新たにしました。おっさんばっかりの電車に乗るとかね(笑)。いろいろと考えさせられますよ。
主役の金子徹平役の加瀬亮ですが、何と言うか、何処にでもいそうな青年の役を非常にうまく演じています。ああいう普通の役って、結構難しいんじゃないですかね。それと、金子の弁護をすることになった新人弁護士須藤莉子役の瀬戸朝香。彼女って、何か、結構弁護士役多いですね。まぁ、結構硬いそう言う雰囲気のする女優さんですが。一番いい、と言うか、怖いと思ったのが、裁判官室山省吾役の小日向文世。小日向さんって、パッと見、フンワカした雰囲気で優しい感じがする人ですが、ドラマなどでは、結構こういう冷たい役が多いですね。イメージと、役柄の、どちらが本当の小日向さんなのでしょうか? 最後にTIPS。監督の苗字”周防”の読み方ですが、”すおう”ではなく”すお”が正しいそうです。

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勝手に評論家

2.5つまらなかった!

2007年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

社会的意味がある? 「ふざけんな」ってとこかな。理由はいろいろ。「映画を信じるな、もっと疑え」として、ブログに書いている。
11年という時間のなかで完成した映画とプロデューサーが新聞で語っていた。自慢できるのか、11年って。

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chocolate
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