「怖い。怖すぎる。冤罪はこうやって作られる。」それでもボクはやってない 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
怖い。怖すぎる。冤罪はこうやって作られる。
周防正行監督の『Shall we ダンス?』以来11年ぶりの作品。その11年ぶりの作品は、これまでの周防作品とは全く異なる社会派の映画。しかもその内容は、単に映画と言う枠を超え、ほとんどドキュメンタリーと言ってもいい様な、非常に重い、意味のある内容となっています。
重すぎます。通常、映画と言うものは娯楽作品なので、何らかのストーリ展開や、明るい結末に向かって、何らかのドラマがあるものですが、この作品には一切そう言う要素はありません。それが先の「ほとんどドキュメンタリー」と言う感想に出ています。敢えて結末は記しませんが、「えーーーっ!」と言う、結構救われない結果(ほとんど結末を言っていますね)になっています。無実の人が、犯罪者に仕立て上げられていく。怖すぎます。これほど救われない映画は珍しい&初めてです。
この作品では、周防監督自身がいろいろなメディアで公言しているように、日本の裁判制度の問題点が凝縮されています。警察の留置場に長期間拘留しての威圧的な取調べ、通知されない被疑者の権利、(特に痴漢犯罪では)行われることの無い捜査と被害者証言だけでの犯罪立証、やる気の無い当番弁護士、被告側への過度な立証責任などなどなど・・・。まぁ、当番弁護士の件に関しては、この映画の場合はいろいろとその理由もあるんですけどね。それにしても怖すぎる話です。日本の刑事裁判の有罪率は99.9%だそうで、70%~80%程度と言われているアメリカの有罪率と比較すると驚異的です。この有罪率の異常は低さは、日本の警察・検察が優秀であるという(本当か?)理由を差し引いても、明らかに異常。これでは裁判ではなくて、単に量刑を決めるだけといっても過言ではないですね。劇中、「裁判官も官僚だから」という意味合いのせりふが出、また、無罪判決を裁判官が書く難しさも語られていますが、それでも酷すぎます。これを見ると、犯罪者にならないためには、自己防衛しかないということを心新たにしました。おっさんばっかりの電車に乗るとかね(笑)。いろいろと考えさせられますよ。
主役の金子徹平役の加瀬亮ですが、何と言うか、何処にでもいそうな青年の役を非常にうまく演じています。ああいう普通の役って、結構難しいんじゃないですかね。それと、金子の弁護をすることになった新人弁護士須藤莉子役の瀬戸朝香。彼女って、何か、結構弁護士役多いですね。まぁ、結構硬いそう言う雰囲気のする女優さんですが。一番いい、と言うか、怖いと思ったのが、裁判官室山省吾役の小日向文世。小日向さんって、パッと見、フンワカした雰囲気で優しい感じがする人ですが、ドラマなどでは、結構こういう冷たい役が多いですね。イメージと、役柄の、どちらが本当の小日向さんなのでしょうか? 最後にTIPS。監督の苗字”周防”の読み方ですが、”すおう”ではなく”すお”が正しいそうです。