「流されていく「下駄」」姿三四郎 neonrgさんの映画レビュー(感想・評価)
流されていく「下駄」
冒頭で三四郎が川に飛び込んだ場面に続く、下駄が少しずつ移動していく描写は、時間経過を極めて静かに、詩的に描き出しており、以降の黒澤作品で多用される「映像による語り」の原型がすでに見て取れる。
主演は三船敏郎の登場以後は徐々に黒澤作品の主役から外れていったが、初期作品では重要なポジションを占めていた藤田進。
説明文の挿入や、やや唐突な展開映画はおそらく検閲によるもので、その影響のためか(処女作であるためでもあると思うが)黒澤自身も後年「描きたいことの半分も描けなかった」と語っている。
『姿三四郎』は他の代表作に比べれば粗さの目立つ作品だが、その中にはすでに「正義とは何か?」「人間はいかに生きるべきか?」といった彼の一貫したテーマが芽生えがみてとれる。戦後に花開く数々の名作の“精神的土壌”とも言うべき、貴重な一本。
70点
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