「白バラのゾフィーのように信念を貫き通すこと。そんなことが若い頃の自分にできたであろうか。」白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0白バラのゾフィーのように信念を貫き通すこと。そんなことが若い頃の自分にできたであろうか。

2025年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 「勝ち組」「負け組」とハッキリ区別したがる人が多い今の世の中では、自分さえよければそれでいいという個人主義の考えの人がほとんどなのかもしれません。裏切られたという「痛さ」を味わったことのある人じゃないと他人の痛みは理解できないかもしれませんし、優柔不断な世渡り上手じゃないと生きていけない世の中なのかもしれません。

 前半、ビラ配りによって逮捕された21歳のゾフィーとベテランの尋問官モーアとの壮絶なまでの心理戦では、あくまで犯人じゃないことを主張していた彼女が家宅捜索によって得た資料から徐々に崩されていく過程において、ゾフィーの精神面での成長が見られると同時に、ナチスのモーアが何とか彼女を極刑を受けさせたくないという人間らしい気持ちを取り戻す描写が見事。「まだ子供なんだよ。早く大人になりなさい」とでも言いたげなモーアではあったが、仲間は売れないという確固たる信念を崩せない苛立ちを隠せない。そして、「母親も逮捕されるのではないか?」という不安のため、そこを攻められたらお終いだと観ている者も手に汗握る場面でもあった。

 実際に前線のシーンなど出てこないが、スターリングラードでの敗北をひた隠しにするナチス。こうした戦争の生々しさの映像を一切排除して、非暴力の反戦運動を続けた若者の姿だけをとらえた演出は逆に新鮮に感じました。もしや淡々としたドキュメンタリーのような映画になるのではないかと危惧しましたけど、「正義は死なんぞ!」という父親の強い言葉に胸が熱くなりました。そして、99日の死刑執行猶予期間が覆されたあとのシークエンスには言葉も出ないくらい打ちのめされました。

 このような映画を観ると、愛国心教育が取りざたされ、日本国憲法第9条を蔑ろにしようと目論む今の日本の政治とつい比較してしまう。共謀罪などという戦前の治安維持法にも通ずる悪法を通そうとするなんてナチスと同じだ。こんなきな臭い法案が可決されたら、戦争反対という言葉を使っただけでも投獄されることになりかねない。何しろ「戦争したら負けるかもしれない」とか「戦争はよくない」という信念を持つことが許されないのです。もし本当に制定されたなら、「反戦」という言葉を使ったレビューはすべて削除されるでしょう。すぐに逮捕されるかもしれません。いや、もうすでに公安から目をつけられているかも・・・5日間記事が更新されなかったら、新聞の死亡欄をチェックしてください・・・

【2006年映画館にて】

kossy
きりんさんのコメント
2025年3月13日

「Fukushima50」に共感ありがとうございました。

国会で、福島原発は電源を補強して地震に備えるべきだと食い下がる共産党議員の質問に対して予備電源は要らないと国会で一蹴した安倍さんの責任のこと、レビューで追及したら削除されました。
このサイト、けっこうたびたび抹殺されるので嫌になります。以前はサイト側が設定した使用禁止語が含まれると、その旨の表示が出て投稿自体がはねられていたのですが、
今では一旦投稿は受け付けておいて後日いつの間にか消されているシステムになっています。
それが幾度も繰り返されると、だんだんとレビューの筆が鈍くなってついには“自主規制”してしまうようになっちゃうんですよ。
発禁処分を受ける作家たちって、こうやって精神的にころされていくのだろうと思います。

「白バラの祈り」はいつか観ようと思っている作品です。

きりん
everglazeさんのコメント
2025年2月27日

怖いけど😱素晴らしいレビューですね。

everglaze
talismanさんのコメント
2025年2月27日

kossyさん、共感ありがとうございます。kossyさんのレビューに本当に同感です。ドイツもオーストリアも日本も息苦しくなってきて晴れ晴れとしません

talisman