「今でもマフィア映画のカルト的傑作として評価されているのも納得」スカーフェイス 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
今でもマフィア映画のカルト的傑作として評価されているのも納得
午前十時の映画祭14にて『スカーフェイス』(1983)を4Kで久々の鑑賞。
『スカーフェイス』(1983)
ハワード・ホークス監督『暗黒街の顔役』(1932)のリメイクですが、脚本で参加したオリバー・ストーンが主人公トニー・モンタナ(演:アル・パチーノ)の出自をキューバから国外追放された反カストロ主義者に改変、公開当時の社会情勢を上手く織り交ぜたのは流石ですね。
イタリア移民を描いた『ゴッドファーザー』のマイケル・コルレオーネが冷静沈着な【静】なら、本作のトニー・モンタナは猪突猛進の【動】とまさに相反、対極なキャラクターを見事演じ切ったアル・パチーノの面目躍如、妻のエルヴィラ・ハンコック役を演じたミシェル・ファイファーも妖艶なまさにファム・ファタールでしたね。
監督は名匠ブライアン・デ・パルマ氏。
分割画面、長回し、スローモーション、目線アングルなど趣向を凝らしたいわゆる『デ・パルマカット』が有名ですが本作では凝った画作りは控えめで170分という長尺をだれさせず、麻薬王まで一気に駆け上がり、そこから転げ落ち破滅する最後までをテンポよく緊張感を維持させてくれましたね。特にラストのキレッキレの銃撃シーンは白眉。
トニー・モンタナは野心家であるが、全てを手にした後の空虚さや、『女子どもを殺さない』信条のため生き残りの最後のチャンスを逃すなど憎めないアンチ・ヒーロー。
今でもマフィア映画のカルト的傑作として評価されているのも納得ですね。
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