裸足の1500マイル : 映画評論・批評
2003年2月1日更新
2003年2月1日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー
広大な荒野と少女の寡黙な肉体と
あまり食指が動かない映画だったが、“壮大な画面”に陶然とした。オーストラリアの広大な荒野とアボリジニの少女の寡黙な肉体の対比が素晴らしい。クリストファー・ドイルの豊穣な撮影とピーター・ガブリエルのスピリチュアルな音楽の勝利だ。
「1931年のオーストラリア……“隔離・同化政策”の対象となり母親から引き離された3人の少女が故郷に戻るために自分を信じて90日間歩き続けた真実の物語」――惹句が本作のすべてを語っている。「母をたずねて三千里」的逃亡劇で、余計な緊迫感を植えつけないフィリップ・ノイスの禁欲的にして淡々とした語り口にも好感がもてる。彼女たちが荒涼とした大地にしるした“足跡の長さ(2400km)”に呆然とした!
押しつけがましくなく提示される主題――白人の先住民アボリジニに対する「隔離同化政策」は、実際70年代まで行われていたそうだ。大戦前夜、日本の朝鮮半島支配も同じではなかったか! あああ、人間はつくづくバカである。
追う側の保護局の役人(ケネス・ブラナー)の名前はネビル。アボリジニの言葉で「デビル」だそうだ。時折挿入される“鷲の視線”など唸る場面が多い、スミにおけないシャシンである。
(サトウムツオ)