「「天才」と呼ばれる人がつくった典型的な作品」レクイエム・フォー・ドリーム あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
「天才」と呼ばれる人がつくった典型的な作品
本年度ベネチア映画祭の最高賞作品「ザ・レスラー」のニュースを見て、かなり驚いた。それは主演が懐かしきミッキー・ロークだったのもあるが、もっと驚いたのは監督の名前を見た時だ。ダーレンン・アロノフスキーといえば、あの脳裏にこびりつく、究極の絶望体験を自分にくらわした監督の名前じゃないか、と。そしてその作品がこの映画のことです。
この映画をけれん味なく描写すると、本作は、実用性に溺れた人々のなれの果てをこれでもかと言わんばかりに冷酷非情に描いたもの。実用性とは、ダイエット薬や風俗(お金が手に入りやすい)、ドラッグ(現実逃避の手段や、これまたお金)などのこと。その描写たるや、ほんと救いがない。観てて気持ち悪くなってしまうほど。「実用性」の怖さに対する伝え方を完全に間違っている。
考えるに、このアロノフスキー監督もまた、皮肉なことに自分の才能に溺れすぎてしまったのだろう。リアルさにこだわりすぎるあまり、観る人への配慮が完全に本作には欠けている。配慮があったとすれば、この監督さんは究極のSだ。なんでも、本作後、この人はすごいスランプを経験したらしい。それを聞いて悪いけど安心してしまった。
それでも、もちろんベネチア賞作品は観るつもりです。不思議なもので、究極の体験を与えた人ほど、「その後」が気になってしまうものなんです。
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