ポビーとディンガン : 映画評論・批評
2005年11月29日更新
2005年11月26日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー
“目に見えない大切なもの”はここにある
「ポビーとディンガン」とは、ある女の子にしか見えない大切なイマジナリーフレンド(想像の友達)。で、この映画は、ある日、2人がいなくなって女の子が病気になるというお話……と聞くと「そうですか」って感じだが、見てみると、童心を売り物にするハリウッド映画とはまた別の発見があった。
原作は英国作家ベン・ライスのベストセラー。女の子の兄、11歳の少年の一人称で語られ、彼自身、「ポビーとディンガンなんてうそっぱちだ」と思っているのだが、妹のために信じてあげる。このお兄ちゃんの奮闘がなかなかいいのだ。
さらに、この兄妹の一家はオーストラリアの茫漠とした土地に住んでいる。父親が一攫千金を夢見てオパール採掘場に流れてきたからだ。母親はそのことを少し不満に思いながらスーパーで働いている。こうした一家のどことない“不安定さ”が、小さな妹のイマジナリーフレンドは藪から棒に出てきたのではないと感じさせる。そして、“目に見えない大切なもの”とは、女の子を思いやる家族や隣人、つまり現実を普通に生きている人々の心の中にこそあると感じさせる。父親が探すオパールが、茫漠とした地中のどこかに眠っているように。
(田畑裕美)