十二人の怒れる男のレビュー・感想・評価
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裁判、怒りの言い合い。
日本語吹き替えで鑑賞。
動かない扇風機のなかで、みんなが怒っている。
ラスト1。
裁判所の外で、老人がヘンリーフォンダに握手を求め、
番号しか知らなかった互いに名前を告げるものの、
それ以上の会話が生まれない。その余韻。
ラスト2。
野球のチケットを持っていた男は何があったのか、自分が何をしたのか、
すべてを忘れてスタジアムに向かったんだろうな。
改めて鑑賞して気がついたこと
言うまでもなく映画史に残る大傑作なのだが、2024年の今観てみると、昔観た時とは違った部分に目がいく。
・陪審員は男しかいない。
・陪審員にアジア系やアフリカ系がいない。
・女性を揶揄するセリフも普通にある。
・スラムの人々へのヘイトが思いの外激しい。
・ヘイトの構造はSNS時代の今も変わらない。
・移民の国なのに、移民を格下に見てるのか…。
・喫煙率がバカ高い。
・ウォーターサーバーがある!
・暑いという言葉通りみんなだんだん汗だくに。
・机上を片付けずに立ち去るのは文化の違いか。
時代の進んでいるところと、変わらないところが見えてくるのがおもしろい。
「脚本がよければ、シチュエーションを限定しても充分に一本の映画として説得力のあるものがつくれるという見本のような作品」としてだけでなく、リアリティがあるこうした映画には、「その時代を記録した資料的な側面」もあるんだなと思った。
そういえば、日本でも取り入れられた裁判員制度は、今はどうなっているのだろうか?
面白い
めっちゃ古い映画だけど、密室劇が見たくてそういや観てなかった今作を鑑賞。とても良い。
全編会話のみ。とある殺人事件の陪審員たちがあーだこーだ言い合うだけなのだが徐々にそれぞれのキャラクターもわかっていくし、裁判でこういう証言があったなどの展開でも回想シーンなどは挟まず会話だけというのも潔い。
考えさせられる系の映画とされがちだと思うけどただ単純に面白かった。
「事実」の裏に隠されたもの
言わずと知れた名作中の名作で、今さら解説など必要としない傑作密室劇である。
冒頭、12人の陪審員達はリラックスした中にもどこか審理に対して軽く考えている節が見受けられる。
確かに、蒸し暑い陪審員室で「評決を出して下さい」と言われ、チャッチャと片付けますか!とならない方が不思議だ。
私が「十二人の怒れる男」を観るのは2回目だからかもしれないが、そんな浮わついた男たちのなかで唯一8番(ヘンリー・フォンダ)だけが言葉少なくじっと窓の外を見ている、その事が殊更に強調されているように見える。
彼はこの時、何を考えていたのだろう。この後明かされる彼の行動を考えると、部屋に入った時点からこの後の議論プランを綿密に考えていたのでは、と思ってしまう。
会議でも何でも良いのだが、時として議題とは全く関係のない事柄が議論の大勢を決めてしまう時がある。
時間の制約であったり、関心の薄さであったり、議題に対する知識のなさであったり、その要因は様々だ。
だが確実に、論じられるべき事柄の裏でそれらは大きな影響力を持ち、「事実」など簡単に吹き飛ばしてしまう。
8番は結論ありきの陪審員の姿勢に異議を唱え、「自明の事実」とされている証言を一つ一つ検証する場に残りの陪審員を引き込んでいく。
「議論するまでもない」と思われていたことに「本当にそうだろうか?」と疑問を提示し「明白とは言えない」と結論付けていく様は圧巻のタフさだ。
根拠のない決めつけにNOを突きつける、痛快さ。
しかし忘れてならないのは、彼の考えに同調していくものたちは決して「裏に隠れた余計な事柄」から解き放たれてはいないということだ。
最初に8番に同調する9番の老人は「彼の勇気ある発言に心動かされた」のだし、5番の男が同調したのは10番に対する反発なのではないかと思われる節がある。
単純に「良かった、良かった」とならない脚本の秀逸さが、この作品の大きな魅力だと感じる。
我々が考える「事実」とは、とても脆いものだと痛感させられる映画だ。
映画史に残る傑作法廷劇
説明不要の大傑作ですね。
30年前の初見以来の再見ですが評価は揺らがず、満点です。
ただ、今回改めて感じたのは、平均的な腕を持った監督なら傑作必至の完璧な脚本と話の展開です。
逆説的にいえば、せっかくのルメット先生も腕の見せ所がありません。
議論というアクション‼️
十二人の陪審員が一人の少年の有罪か無罪かをめぐって、白熱の議論を行なう。十一人が有罪に投票する中で、残る一人が無罪を投じる・・・1時間35分の間、十二人の男たちの議論だけで物語が進むのですが、なんでこんなに面白いんでしょう⁉️一分の隙もない構成と素晴らしい脚本、俳優たちの演技力、そしてほぼ陪審員室の中だけという密室劇的シチュエーションで、大長編以上の満足感を観る者に与えてくれますよね‼️ヘンリー・フォンダ扮する8番陪審員が有罪証拠の一つ一つを吟味、そのハンドリングはまるでシャーロック・ホームズ、エルキュール・ポアロ、はたまた金田一耕助‼️そして陪審員室を殺人現場に見立てて、被告の行動を再現するところはまるでミステリー映画みたいでゾクゾクさせられます‼️そして繰り広げられるセリフの応酬は、まるでアクション映画のような痛快さです‼️ヘンリー・フォンダはもちろん、特に最後まで折れないリー・J・コッブ、冷静に論理でフォンダに応酬するE・G・マーシャルの2人の演技が圧巻で素晴らしかったです‼️私はこの映画を観るまではデモクラシーというのは多数決なのかなと思っていたのですが、本当は少数派の意見に耳を傾けることであるという事を教えてくれた大切な映画です‼️
いろんな感情が行き交うある意味サスペンス
1室の中で論議するだけの映画なので制作費は安くついたんだろうなと想像できるが中身は素晴らしかった。
1人の冷静沈着な男が入っていたおかげで圧倒的に有罪有利が無罪まで導いてしまう。
感情は時には判断を誤らせてしまう。
色んな個性の集まりの集団の中で感情が勝っていきそうな中で1人の冷静な判断のできる男がいたことといなかったことでは真逆の結果になっていたかもしれず、それが人の命に関わっているとしたら・・・・。
陪審員制度は日本にもあり、自分がその立場になることがあれば冷静さを心がけたいと思った。
ただ、自分は判断力が弱いのが心配だが・・・
見応えのアル良い映画です。
暑苦しい密室での白熱する議論。目が離せないスリリングな展開。
和田誠さんと三谷幸喜さんが対談した「それはまた別の話」という本にこの映画が載っており、何度も観たはずなのにまた観たくなり視聴。
個人的に大好きなこの映画。黒澤監督の「七人の侍」で好きな侍ができるのと同じく、ヘンリー・フォンダ以外の陪審員にも注目するようになっていた(ちなみに、三谷さんは気が弱いながらも次第に自分の考えを持つようになっていく2番陪審員(ジョン・フィードラー)がお気に入りらしい)。
父親殺しの容疑で逮捕された少年の裁判が終わり、12人の陪審員は評決を出すべく、この世から隔離されたかのような蒸し暑い部屋に入っていく。
タイトルバック。錆びた扇風機の上に据えられたカメラ(丁度部屋の全景を見渡せる位置である)は流れるように動いて皆を長回しで映し、我々はこの小さな世界へと引き込まれてゆく。
彼らは挙手制で採決をとり、12人のうち11人が当然の如く有罪に手を挙げる。しかし、ただ1人8番陪審員(ヘンリー・フォンダ)だけが無罪を主張し、この手に汗握る"話し合いのみ"で構成されたクライムドラマが始まる・・・。
カメラワークは文字通り完璧で、実は12人全員が画面に収まるショットは数える程しかなく(その全てが計算し尽くされた見事な構図である)、ほとんどが
・発言している人物のクローズアップ
・机を挟んだ数人のショット
・机を離れた場所でのショット
で成り立っているのだ。
意識しなければそれに気づかせないプロの技が全編通して光っている。
ご存知の通り本編95分間のうち93分がこの密室での議論に費やされているため、最後の裁判所から出ていく場面は身体的、心理的な開放感が見事に描写されており、爽快だ。
陪審員たちは名前さえ明かされないのにも関わらず、キャラクター性が確立しており、議論が進むにつれて彼らの性格、考え方が徐々に露わになってゆく。
偏見の塊のような10番陪審員(エド・べグリー)、
常に冷静で論理的な4番陪審員(E・G・マーシャル)、
被告人を絶縁した息子と重ね、有罪一点張りの頑固な3番陪審員(リー・J・コッブ)
などといった極めて個性的な男たちを相手に8番陪審員はただ1人立ち向かう。
また、効果音が全くと言っていいほど使用されていないのも見どころの1つだ。本編中音楽が流れてくるシーンは(確か)たったの4回で、特に印象的な場面ばかりである。すなわち、
・8番陪審員が自分を除く11人で無記名投票してほしいと持ちかけるシーン
・休憩時間中、8番がトイレで6番陪審員(エドワード・ビンズ)に説得された後のクローズアップ
・10番陪審員が皆からそっぽを向かれるシーン
・ラスト、全員が部屋から退出するシーン
で、そのうち3回は短いながらもオープニング、エンディングで流れてくる静かなテーマ曲と同じもので、感情が揺さぶられる。
同調圧力に負けず、間違っていたとしても自分の考えを持つ事の大切さを、どれだけの人がこの映画から学んだことだろう。
当たり前を疑い、批判を恐れず発言する8番陪審員は偉大なヒーローであり、この映画を見る度に勇気づけられる。
本気で悩んでいる誰かにアドバイスするとき、親身になればなるほど、言...
本気で悩んでいる誰かにアドバイスするとき、親身になればなるほど、言葉を選ぶし、自分の助言が少しでも相手に影響を及ぼすのだと考えると、果たしてなんと言ってあげればいいかと途方に暮れることがある。アドバイスをするときでさえ悩むのだから、人の命運を選択するなんて、とてもじゃないが身が重すぎる。人間の要領を超えた域である。
しかしそんな損な役回りを与えられたのが、今作の男たちである。
男たちの議論を通して浮かび上がる性格や倫理観。情緒。
95分というコンパクトな尺の中に詰め込んだのが本当に凄い。
一人の男によって状況が一変するというシチュエーションも、今作に限っては当然の成り行きだと思うかもしれないが、ここまで重要な問題が誰か一人の思惑が伝染し、ガラッと変わってしまうのは本当に怖い展開だ。
細かな違和感にこだわることで見える真実と、それぞれが信じたいと思う...
細かな違和感にこだわることで見える真実と、それぞれが信じたいと思う都合。映画の結末の爽やかさとは別に、本当に人は話し合いで理解し合えるのか?というぎもんも残る。
傑作
何時観ても何度観ても文句無しの名作。狭くて暑い部屋でただおっさんが議論してるだけなのに。いやだけじゃないけど。完璧な脚本。そしてこの作品を日本人の文化や性質に見事に置き換えて別の戯曲を書いた三谷幸喜もまた天才。
人間の心だけを描いた映画
・個人的な感情のメガネをかけて世界を見ている
・ラストに泣けた
・本当は被告に情があったが、息子を憎む気持ちでそれを否定していた
・そして自分のなかに抑え込んでいた愛を認めた
・なんで自分を大切にしてくれないのかという怒りの奥に、ものすごい純粋な人間の愛がある
・愛は湧いてしまうもの。誰もそれをコントロールはできない。
・民主主義の映画
・誰もが何を言ってもいい権利がある
・大事なのは、言っていることが、嘘のない言葉かどうか
・それを最後はみんなで見つめた
・葛藤している、だらしない、だめな、自分勝手で、わがままで、誰かを蹴落としたくて、そんな大丈夫じゃない人間模様をただ描いている。
アメリカ男子の縮図
色んなタイプのアメリカ男子の人間模様。名前は出てこないけど、一人一人個性が面白く、結末は予想出来ていても、各々の気持ちが次々に変わりゆく様は興味深かった。
同時に陪審員裁判の恐ろしさ、「疑わしきは罰せず」・・・考えさせられました。
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三谷幸喜がやりそうな映画だなぁと思っていたらリメイク?パロディ?やってるんですね。こちらも観たいと思います。
ググってみたら真犯人は〇〇の息子だ!と出ていましたが、深読みしすぎ?!だなぁ・・・
今見ても色褪せない、新鮮さすら感じる作品
ネットで面白い映画を探していたときに、名作だと名前が挙がっていたので視聴しました。
「白黒映画か」「60年も前の映画か」と、どこか斜に構えて観ていました。
しかし、観ていくうちにどんどんと引き込まれていき、最後まで全く飽きることなく観てしまいました。
12人のオッサンが暑苦しく雁首揃えて議論するだけの映画なのに、何故こんなに面白いのか。汗だくで熱弁する12人のオッサン達が何故こんなにも魅力的なのか。
「古い映画だから」と偏見を持たずに、騙されたと思って観てみてほしい。本当に面白いから。
めっちゃくちゃ面白い。
最後まで会議室から出ずに、ここまでの臨場感を作り出す役者陣のすごいことすごいこと。テンポからキャラクターから演出から何から何までめっちゃくちゃ面白い。
思慮分別の大切さ、感情的であることの愚かしさがよくわかりました。
舞台を見ているような作り、密室劇の神髄
始めて観たのは30年以上前高校生の頃。3本立てのうちの1本でお目当ての映画ではなかった。
ところが登場人物も少ない白黒の映画にあっという間に引き込まれ、二転三転する男たちの意見に、無罪なのか有罪なのかドキドキしながら見た記憶があります。
その後何度か見返してこの映画の素晴らしさが改めて分かったような気がします。
まず俳優たちの演技が素晴らしいですね。それぞれの人の個性が際立っていてアメリカ人のことをそんなに知らない私でも、実際にこういう人物がいそうと、すんなり受け入れられました。クールでありながら正義に対する情熱を持っている8番(ヘンリーフォンダ)は何よりかっこよかった。
演出は最小限の情報を小出しにすることで、観客の想像力を掻き立て、そのあとの展開が気になり前のめりにさせる。こういった手法は映画作りでは基本的なことかもしれないが、ここまでシンプルに作って成功している例は、未だ見たことがないですね。(下手をすれば序盤で観客が興味を失ってしまうリスクがある)
それから計算しつくされたカット割り。時には長回しがあり、いつの間にかスッとカットが入っていたり。舞台を見ているときの観客の視線を意識しているように感じられる。
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