劇場公開日 2007年3月3日

「聖と俗のさじ加減」パフューム ある人殺しの物語 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5聖と俗のさじ加減

2019年6月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

むかしワインの仕事をしていました。
香りへの感受性の開拓。そして味覚を言語化する訓練。その中で出会った大著でした。

原作とこの映画作品は、香りそのものへの記述が少し物足りなかったかな。
大著から繰り出す壮大なドラマを経てイメージされる香りよりも、小さな紙片に綴るソネットのほうが僕は香りの表現としては好みです。

それでも興味深かったのは、グルヌイユの醜い容貌と臭気が民衆を争乱させる聖なる香りに隠されていた媚薬であった、ということ。
つまり、パフュームに秘められた屍の匂いや汗・体臭が実は人間の本能を虜にする隠し味なのだという事実です。

ワインのテイスティングの表現にも「革の匂い」「濡れた犬の匂い」なんていうのもあります。
「悲しみを流してくれる雨の香り」というお線香も・・・
《嗅覚》という原初の感覚は突然に古い記憶を呼び覚まし心にさざ波を立てる。これは誰もが思い当たる経験だと思います。

きりん
きりんさんのコメント
2019年6月14日

グルヌイユの役ベン・ウィショーは「ブライト・スター」で美しき詩人キーツを演じています。

きりん