劇場公開日 2004年5月1日

「キャリア中期のピーク」パッション(2004) うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5キャリア中期のピーク

2023年5月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

今考えると、メル・ギブソンに純粋な宗教心があったとは思えない。非常に残虐な描写は、俳優にとって過酷な挑戦だっただろう。画面から伝わってくる痛さだけでも目をそむけたくなる。しかし当時は敬虔なクリスチャンとして振る舞っていたのか、周りがそんなイメージで包み込もうとしたのか、とにかく聖書に忠実に映像化を試みたという触れ込みだった。そう言っておけばただの「どS」の好奇心も成立するからややこしい。

稀代のアクションスターが、映画を撮れば賞レースの常連に食い込む高い評価を得られる内容で、なおかつ興行的にも成功するという、みんなが喜ぶ理想の映画人だったメル。このあと反ユダヤ思想を糾弾され、すっかり陽の当たらないポジションに追いやられてしまったが、子供みたいな欲求を実現しようとする純粋さは今も失っていないようで。ひとまず安心したが、この当時は心を病んで友達が離れて行ったんだと思って残念で仕方なかった。

うそつきカモメ