パッション(2004)

劇場公開日:

パッション(2004)

解説

人間イエス・キリストの死までの最後の12時間を写実的に描く問題作。メル・ギブソンが構想12年、製作費2500万ドルには私財を投じ、イタリアのチネチッタ・スタジオで撮影して完成。公開の可否を巡って長期に渡りキリスト教団体等との論争が繰り広げられたが、公開した途端に驚異の大ヒットを記録。観客には死者や警察に自首する犯罪者なども出現した。セリフはすべてラテン語とアラム語で語られ、全米でも英語字幕付きで公開。

2004年製作/127分/PG12/アメリカ・イタリア合作
原題:The Passion of The Christ
配給:日本ヘラルド映画

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第77回 アカデミー賞(2005年)

ノミネート

撮影賞 キャレブ・デシャネル
作曲賞 ジョン・デブニー
メイクアップ賞  
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映画評論

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映画レビュー

3.5キャリア中期のピーク

2023年5月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

今考えると、メル・ギブソンに純粋な宗教心があったとは思えない。非常に残虐な描写は、俳優にとって過酷な挑戦だっただろう。画面から伝わってくる痛さだけでも目をそむけたくなる。しかし当時は敬虔なクリスチャンとして振る舞っていたのか、周りがそんなイメージで包み込もうとしたのか、とにかく聖書に忠実に映像化を試みたという触れ込みだった。そう言っておけばただの「どS」の好奇心も成立するからややこしい。

稀代のアクションスターが、映画を撮れば賞レースの常連に食い込む高い評価を得られる内容で、なおかつ興行的にも成功するという、みんなが喜ぶ理想の映画人だったメル。このあと反ユダヤ思想を糾弾され、すっかり陽の当たらないポジションに追いやられてしまったが、子供みたいな欲求を実現しようとする純粋さは今も失っていないようで。ひとまず安心したが、この当時は心を病んで友達が離れて行ったんだと思って残念で仕方なかった。

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うそつきカモメ

5.0自分のような異教徒にも強烈な体験がもたらされたことは間違いないことなのです

2022年8月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

パッションとはキリストの受難のこと

キリストの最後の12時間を聖書に極めて忠実に描いています
途中様々な聖書の中のエピソードがイエスの一瞬の回想として挿入されます
死後三日目の復活はごく短くエピローグとしてあります

1973年のロックオペラ映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」は最後の7日間を描いていました

現代のようなそうでないような描写ですがこちらのロケ地は本物のイスラエルの砂漠でした
本作は良く似ているされる南イタリアのマテーラでロケされています
ほらあの「007ノータイム・ツーダイ」でもロケ地だったところです

普通の日本人に取ってはキリスト受難のあらましは「ジーザス・クライスト・スーパースター」の方がわかりやすいかもしれません
何故なら本作は聖書を読んで、全て内容を知っていることを前提に撮られているからです

自分はキリスト教徒ではありません
だから聖書も一般常識としての理解程度のことに過ぎません
単なる知識でしかありません
その知識すらどこまで正しいのかも怪しいのです
つまり、ただの映画好きの普通の日本人です

そんな人間が何故に本作を観るのか?
心の何かが本作を求めていたのか、そうでないのか
それすら自分のことなのにわからないのです
それでも何故か観たくなったのです

本作には単なる映画的な喜びや娯楽の要素は皆無です
イエスへの身体的な痛みを、観衆に感じさせるような克明さで映像にこれでもかと延々と突き付けられる映画です

キリストへの信仰が篤い人なら、キリストの受難シーンの痛みを我こととして、その凄惨さを受け止めて宗教的な感動体験になる映画なのかも知れません

ではキリストへの信仰の無い自分はどうだったでしょうか?

屈強なローマ兵二人が全力で棘のある鞭で無数の傷で血だらけのイエスを痛めつける様を遠巻きに眺めるエルサレムの群衆と同じ目線で観ているのです
本作を観ること自体が野次馬の群衆と何も変わることがないのだと思います

時は西暦30年4月7日
冒頭の紀元前700年は旧約聖書のイザヤ書53章の5でこの日のことが預言された年代のことです

ペドロや弟子達が眠りこけてイエスから叱責をうける「ゲッセマネの祈り」の有名なエピソードから始まります
西洋絵画の宗教画の主題に取り上げられることが多い名シーンです

レオナルド・ダビンチの壁面で有名な「最後の晩餐」のあとの深夜の出来事です
場所はエルサレム東の郊外にあるオリーブ畑の山のゲッセマネの園

エヴァンゲリオンの渚カヲルのように突然現れる不気味なフードの男は悪魔でしょう
この後にも時折現れたり、様子を離れて見ていたりします

劇中、全ての役者達は英語で話さず、イエスや弟子達が話したであろうアラム語で、ローマ人ならラテン語で話します
そこまで忠実に再現しようとしています

力尽き朦朧となったイエスの代わりに十字架を運ぶのを手伝わされるキレネのシモンなど聖書に書かれたことを、実際はこうであったであろうと克明かつ写実的に再現されます

二人の黒衣の女性
中年の女性はもちろん聖母マリア
若い方の女性はマグダラのマリア
二人に寄り添う若い使徒はヨハネ

ローマ帝国は三代目の皇帝ティベリウスの時代
「この人を見よ(エッケ・ホモ)」という有名な言葉を群衆に語るのはローマ総督ピラト
その妻はクラウディアです
彼女が渡す白い布で、二人のマリアはイエスが100回以上鞭打たれてできた広場の血溜まりを拭き取ります
その白い布が「聖骸布」になるのでしょう

擬人化された悪魔と、クラウディアが白い布を渡すこのシーンだけが本作に於ける映画的な演出と思われます

十字架に両手首と両足首を釘でうちつけられるシーンは、観衆自身がその痛みを自分の事として感じられるような映像です
釘が抜けないようにイエスが打ち付けられた十字架を裏返して反対側に突き出た釘の先端をハンマーで曲げるシーンはあまりにもリアルです

死んだのか確認するために「カシウス確しかめろ」と隊長から槍を投げ渡され、その槍でイエスの脇腹をつくローマ兵がカシウス・ロンギヌスです
その槍こそ、エヴァンゲリオンで有名になったロンギヌスの槍です

十字架から下ろされて遺骸を聖母マリアが抱く数多くの芸術作品のテーマとなる「ピエタ」のシーンで本作の物語は終わります

イエスの復活はエピローグ的に短く紹介されるのみです

こうして、あたかもキリストの受難を自分も目撃した群衆の一人であるかのような体験を映画で得るのです

キリスト教徒には大きな意味のある体験であると思います
自分のようなそうでないものも、衝撃を受ける体験でした

この人を見よ!
心臓が引き裂かれるような恐ろしい光景!
めちゃくちゃに虐待された血と傷におおいつくされ、むざんな姿
その姿を目撃した群衆の一人と同じ体験であるのだと思います

戦争はウクライナで泥沼のように続き、アジアでも戦雲が巻き起ころうとしています
日本では大物政治家が撃ち殺され、キリスト教から派生した邪教がいかに地下でとぐろを巻いていたのかが白日の下にさらされました
もはや誰を信じて良いのかも分からないのです
そんな2022年の夏が終わろうとしています

互いを愛しあいなさい

そのイエスの言葉は、21世紀の現実の世界にはあまりにも理想に過ぎて非現実的だと思います

しかし本作を見終わった自分には深く染みる教えに変わろうとしているのです

自分のような異教徒にも強烈な体験がもたらされたことは間違いないことなのです

メル・ギブソンの暴力のリアルな表現を得意とする彼の作風は、本作を撮るために神が与えたもうた能力であったのかも知れません

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あき240

4.0歴史上最低の親不孝者! こういう映画に魅せられる私…多分アレですわ、多分…真性のドМですわ。こういう映画ほんっと大好き!

2022年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

怖い

スコッセシ版『沈黙~サイレンス~』からの篠田版『沈黙-SILENCE-』からの、イエス・キリストに興味を持っての再鑑賞です。
昔にレンタルDVDで観た時は、まさかこういうレビュー書くとは思っていなかたので
「なんともまぁ、えげつない映画借りてきたもんやなぁ…」程度の感想で済ませていたわけですよ。
で、再鑑賞。DVD買ったけれど、日本語吹き替えは無しの方向だったのですね。ギブソン許さない。
えーっとね…困ったなぁ、こういう極めて宗教色濃い、真面目系映画のレビューって…おちょけていたら、お叱り受けるどころか、後ろから刺されてもしゃーない感じでマジこわい!ガク((( ;゚Д゚)))ブル
正直な感想を書きますよ。よいですね?よいですよね?言論の自由よいですよね?
信ずるものに命を投げ出すのは構わんけど、君を信じて愛して慕う人々の心に、絶大な悲しみと苦痛を与えるって、何をかいわんやですわ。
母親をあそこまで悲しませ苦しませるって、絶対にやったらアカンことのひとつやろ!
なのに、まだ敵を赦すだとかほざいてんだZE!どんだけドМなんですかって話ですyo
挙句、後世で映画化までされて、観客をショック死にまで至らしめるとか、いわんやリアル現実で数々の争いの種を生むとか「どんだけの罪人やねん!」って話ですyo!ドМで罪人とか…マジ救いようがないヤツやなぁ…←マジ書きすぎ!不謹慎!
不謹慎の極みを覚悟でもっと言えば、そういうあいつ(最早あいつ呼ばわり)に本当にイラッときたのな。シバかれてる様を見てザマぁって思ったのな。一瞬。
『沈黙』でも思ったけれど、上手く立ち回って生き残れなかったら信念もクソもないでしょうが!
生きてこその明日なんやで!ですわ。
「いつの日か栄光をつかんで、この泪橋を逆に渡ってやろうじゃないか」ですわ。
観てるこっちの身にもなってくれよって話です。
って、それギブソンが悪いのな。キリスト悪くない。やっぱりギブソン許さない。
いや、後付け設定ぽいけれど、だいたい史実に合ってるなら、やっぱりキリスト許さない。絶対。観ていてつらい。THE TSURAI
こういう身につまされる映画ってほんっと困るのよ。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』だとかも。大好きだけれど。
魅せられ観せられる側のこっちの身にもなってよ!
「なら観るなよ!」って話ですが、何故かこういう観ていてつらい映画って、本当に好きなのな。魅せられるんですよ。
私…真性のドMなのかな?
いや!やっぱりちがう!「敵を愛し、迫害する者のために祈れ-愛してくれる人を愛したとて、どんな報いがあろうか」とか「綺麗ごと言ってんじゃねーよ!寝言ほざいてんじゃねーよ!」って思っちゃうもん。
やっぱり敵には「倍返しだ!いや一千倍返しだ!」の方がしっくりくるもん。
自分MなんかSなんか、どっちやねん!いや、だから!そういうこと書く場所じゃないねんて!
閑話休題。
で、ラストです。
私、映画でラストをあまり長々と饒舌に語るのを観せられるのは、好きじゃないんですが、この作品に関しては、再誕をあと5分は描いてほしいな…と思ったです。
あれでは凄まじいまでの数々の受難が、なんとも報われない気がして。ギブソン許さない。絶対。

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野球十兵衛

4.0受難のみに特化した稀有な問題作

2020年8月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

個人評価:3.9
イエスへの凄惨な拷問場面は、まさに目を背けたくなる壮絶な表現だ。反ユダヤ主義的にも捉えられ、まさに物議を呼ぶ問題作といえる。
しかしながら、受難を偽りなく描く事は、その痛み苦しみの描写こそが、重要で大事であったと感じる。この痛みと引き換えに、人間の罪を洗い流したいというイエスの愛が伝わってくる。その拷問が残酷であればある程に。
まさに受難のみに特化した稀有な問題作だ。

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カメ