「一度きりの人生ならば。」きみに読む物語 おりこうさんの映画レビュー(感想・評価)
一度きりの人生ならば。
オープニングの夕陽をバックに、ボートを漕ぐシーン。
綺麗過ぎる風景と、落ち着いた音楽も手伝って、いつまでも観ていたいと思ってしまう程の映像美。
初めてこの映画を観た時には、主人公2人が自己中心的過ぎる。と感じていましたが、久し振りに改めて鑑賞してみると、映画の印象は、まるで違うものになりました。
先ず、365日毎日恋人へ手紙を書き送り続けたこと。
認知症になったパートナーへ、最後のその時まで、根気強く2人の愛を語り続けたこと。
何より、彼女が婚約者の元へ戻る別れ際に、彼が彼女へ問い掛けた「人の事は考えるな(俺も婚約者も両親の事も忘れろ)君はどうしたいんだ?」の言葉。
自分が彼女と一緒になりたいからだけで、言ってる言葉には聞こえないし、それは彼女の表情を見ても分かる通り。(彼女自身の本当の気持ちを、大切にして欲しい想いからの言葉。)
それでも去っていく彼女を、責めたりする様子が無かった時点で、自分と一緒にならない選択をした彼女の事も丸ごと、最後迄、信じて(愛して)いたんだなぁ。。と、愛の深さに脱帽。
ここまで長い間、お互いの事を強く深く想い合って、一緒になった2人のことを、誰も責めたり否定する事なんて、私は出来ないと思う。
2人と別れた婚約者・恋人との間に、それぞれの子供が、いなかった事が唯一の救い。
だとしても、やはり自分の周りにこんな2人がいたら、略縛婚だとか騒ぎ立てる人達は出てくるでしょうし、この映画の2人の様な、馴れ初め〜交際期間迄の状況を知れなければ、私自身もやはり色眼鏡で見てしまうと思います。
きっと殆どの人達は、相手方の恋人さん、世間体、常識というものを気にして(無論、それが健全な思考ですが)映画の様なアプローチはせずに、自分の気持ちに蓋をして、諦める人達が大半でしょうし、それが間違いなく正しい選択だと思います。
ただ、映画として観るならば「現実的な正しい選択」を観たいのではなく、日々の中で、殆どの人達が諦めてしまったこと、届かなかった想い、埋もれてしまった声、叶わなかった願いの数々。みたいなものを、全て救って叶えてくれる。(起こって欲しい全ての事が起こる。)
そういう映画を観たいし、映画の中だけはせめて、ハッピーエンドであって欲しい。と思う私のような者には、こういう映画は必要で貴重な存在です。
それにしても、映画って本当に良いものですね。