劇場公開日 2004年1月31日

ニューオーリンズ・トライアル : 映画評論・批評

2004年2月2日更新

2004年1月31日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー

アメリカ社会には民主主義もへったくれもない

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ともにアカデミー賞2度受賞。ビンボー時代はニューヨークの小さなアパートで同居していたというジーン・ハックマンとダスティン・ホフマンの初共演作品(意外)!

法廷スリラー小説の王様、ジョン・グリシャムの原作のタバコ訴訟を銃訴訟へ変奏した法廷の内外で、ハックマンは百戦錬磨の陪審員工作のスペシャリストである被告側の陪審コンサルタント、ホフマンは原告側弁護士に扮し、火花を散らす。さらに陪審員の内部に評決のゆくえを操作する謎な存在、9番目の陪審員(ジョン・キューザック)も登場し、三つどもえの闘争が最後まで推理小説を読むようなスリルを持続させ、一応飽きさせない。

陪審コンサルタントという日本では聞き慣れないプロフェッショナルにスポットライトを当てた趣向が興味深い。とくにハックマンの憎々しい身振りがスリルの“エンジン”になっている。が、ここまで露骨な人心操作がまかり通るアメリカ社会には民主主義もへったくれもない、と暗澹たる気持ちになった。

法廷映画の傑作、ワイルダーの「情婦」やルメットの「十二人の怒れる男」が描いた、古き良き“正義”はここにはない。法廷はやはり映画の舞台になりにくい場所であった。

サトウムツオ

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