劇場公開日 2005年1月15日

ネバーランド : 映画評論・批評

2005年1月5日更新

2005年1月15日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー

史実を浄化して美しいスピリットをすくいあげる

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変わり者という風評の絶えなかった劇作家ジェームズ・M・バリが「ピーター・パン」を生みだした背景には、ある幼い兄弟と、その母親との心の交流があった。この映画はその事実を浄化し、シンプルに、そこに確かにあった美しいスピリットをすくいあげてみせる。

「ピーター・パン」の物語には「現実逃避」だという非難がつきものだ。この映画はイマジネーションの持つそうした側面も描きながら、それがいかに人々の心を豊かにするか、勇気を与えるかを雄弁に語る。モデルになったピーター少年は、実はピーター・パンとは正反対。現実に傷つき、子供らしい想像力を捨てざるを得なかった子供だ。だからこそ、バリは彼にこのファンタジーを与えた。ピーター少年が心の奥ではなりたかった願望の結晶を。現実とファンタジーが混じり合う映像に、イマジネーションがもたらす高揚感が重なって心震える。「ピーター・パン」を生みだしたのは、人が人を思いやる気持ちなのだ。

子供の心を持った大人=バリに扮したジョニー・デップの説得力がなければ、きれいごとに見えてしまったかもしれない。子供たちの母親、シルビア役のケイト・ウィンスレットもすこぶるいい。2人の交わすストイックな愛情と情感が、映画に厚みを与えている。

若林ゆり

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